あの夕陽・牧師館―日野啓三短篇小説集 (講談社文芸文庫)
作者 日野 啓三
価格 1,260 円
出版社名 講談社
出版年月 2002/10
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    第72回 芥川賞   受賞
『あの夕陽』。タイトルは普通すぎて何のひねりもありません。内容もごく普通の日常を描いていてこれといったひねりはありません。でもこのタイトルが、作品の内容から雰囲気からすべてを象徴していて、それでこそ第三の新人世代の面目躍如といったところかもしれません。内容は、主人公に女ができて、夫婦が離婚へと向かっていく過程を描いたもの。ありきたりといえばありきたり。普遍的といえば普遍的。特徴は何といっても、タイトルに代表されている通りの全体的なけだるさ、やるせなさです。その辺が時代を感じさせて、ある意味新鮮でもあります。西日の差し込む安アパートに住み、銭湯に行き、男は会社の歯車として家庭をあまり顧みずに働く。この辺りの描写はかなりいい味が出ています。等身大の主人公、等身大の文章、等身大のタイトル……とにかく地味です。万人にオススメできるものではなく、ある意味マニアック好み、またはクロウト好みですかね。

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■読者の評価     おすすめ度平均

必読です       おすすめ度
不思議な余韻を残す、素晴らしい短編アンソロジーだった。

日常を舞台としながらも、どこか幻想的、退廃的。どの短編からも「生きることのやるせなさ」が滲み出してきて、胸を激しく揺さぶられる。

とくに『星の流れが聞こえるとき』は、傑作だと思う。


現実のひとつ先の世界へ       おすすめ度
日野啓三氏は、本書にも収録されている、デビュー作『向う側』から、既に現実のもうひとつ先の世界の意識の揺らめきを感じ取り、作品を書いてきた人です。「人間とは−絶えず人間の条件を逃れようとする、忌まわしい傾向性だ−」という『向う側』に記された台詞が、それを示しています。本書に収録されるその他七編も、形は違えど、どこからか超現実の気配が滲み出てき、蠢きだしています。

宗教に多大な興味を示せど、どの宗教に染まることもなく、超越的なものを描いた氏にとっては、そういった「向う側」の世界というものが、存命である間にも、非現実的なものではなく、身近な現実として感じ取られていたという事は、間違いありません。

本書に関して、ひとつだけ欲を言えば、もう一遍だけでも、氏のオリジナリティーの一つの象徴でもある、「都市幻想小説」タイプの作品が収録されていれば、なお良かったようにも思います。そうでなくとも、素晴らしい短編群ですし、何より氏の小説における世界観を初めて味わう方には、本書が最適であるように思います。


20年遅れでの芥川賞作家       おすすめ度
『あの夕陽』。タイトルは普通すぎて何のひねりもありません。内容もごく普通の日常を描いていてこれといったひねりはありません。でもこのタイトルが、作品の内容から雰囲気からすべてを象徴していて、それでこそ第三の新人世代の面目躍如といったところかもしれません。

内容は、主人公に女ができて、夫婦が離婚へと向かっていく過程を描いたもの。ありきたりといえばありきたり。普遍的といえば普遍的。

特徴は何といっても、タイトルに代表されている通りの全体的なけだるさ、やるせなさです。その辺が時代を感じさせて、ある意味新鮮でもあります。西日の差し込む安アパートに住み、銭湯に行き、男は会社の歯車として家庭をあまり顧みずに働く。この辺りの描写はかなりいい味が出ています。

等身大の主人公、等身大の文章、等身大のタイトル……とにかく地味です。万人にオススメできるものではなく、ある意味マニアック好み、またはクロウト好みですかね。