作者 辻原 登
価格 1,121 円
出版社名 文藝春秋
出版年月 1990/08
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    第103回 芥川賞   受賞
中国奥地を旅する日本人商社マンが、桃源郷の名をもつ村に迷い込んだ。そこで彼は、村の名前からは想像もつかない奇怪な出来事にであった。謎の溺死体、犬肉を食らう饗宴…。桃花の薫りがする女に導かれるように村の秘密へと近づき、ついに彼が見た真の村の姿とは。話題の芥川賞受賞作。

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■読者の評価     おすすめ度平均

新世代への過渡期的作品       おすすめ度
 文学は、性とアイデンティティーを求めていた時代である。しかし、時代が若干問題意識のズレを露呈してもいた。次の時代の中心課題は、宗教とナショナリズムだろうと評論されていたように思う。

 はっきりいって、この時期の純文学は力をなくしていた、いや、文学全体が力を失っていた。村上龍がわずかに異彩を放ち、よしもとばななとかとか村上春樹が溝を埋めてた。

 だから、たしかにこの話は面白い。併録の「犬かけて」も、後半ぐいぐい面白い。だけど、どこか無理がある。次世代の課題に偶然近かった題材を取り上げた作品が、たまたま時流にあったのかな、と思わないではいられない。だから、どういう傾向の作品がどんなタイミングで芥川賞候補になるかという、情報としての価値もあるかもしれない。

 少なくとも、一定時間の経過した今、作者から社会への挑発がない作品であったことだけは、はっきりしている。



リアルで幻想的な世界       おすすめ度
芥川賞受賞作ということもあり、また個人的にも中国と関わる仕事をしている為、期待を持って読んだ。・・・筆者が中国関連貿易会社で働いていた経験があるからか、中国の風景描写はかなり細かくて、また登場する中国人達は一癖ある強烈な曲者揃いで、中国(それも内陸、奥地の田舎の方)に行けば本当に出会いそうなリアル感がある。物語の中身は桃源郷という名の村を中心としていて、幻想的で薄霧に包まれた様なミステリアスなストーリーだ。このリアル感と幻想感がミックスされて、独特の雰囲気を持つ内容に仕上がっている。これから中国で駐在して働く人、勉強する人、旅行する人などは持って行って、中国の雰囲気の中で読むと、よりこの独特の雰囲気を体感できると思う。