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「鍋の中」は、十代の男女4人のいとこが田舎の祖母の家で過ごす夏休みを描いている。主人公は17歳の少女。祖母は80歳。いとこたちが集ったのは、60年前ハワイに渡った祖母の弟の息子から手紙が届いたのが発端。パイナップル農園で大金持ちになったらしい弟の家から連絡があったことで祖母の子どもたち(いとこたちの親だ)は勇んでハワイへ向かい、残された4人の孫が祖母の家に預けられることとなった次第。
祖母には13人のきょうだいがいた。孫たちは祖母の記憶をひもとこうとあれこれ尋ねる。命の連鎖を思うときに抱く茫漠たる気持ち、自分はいったいどこからきた誰なのかと考えたときに覚える足場がぐらつくような頼りない感覚。それらが繊細なタッチというよりむしろ骨太な感じに描かれていておもしろい。
生と死、悲しみ、憂い、あわい性、少女特有の自己愛―そこから派生する矜持や引け目、自己憐憫―、ナイーブさと図太さ、それら諸々をすべて包括する大鍋・・・・・そこには大勢の血縁者たちが浮き沈みしている・・・・・何度読んでも好きだなあと思う作品だ。
「少女のひと夏」を書こうとする人がいたらこの作品は必ず読まなければならないと思う(これを手本にということではなく、こういうアプローチがあるのだと)。それ以前に文筆業を志すすべての人に読んでいただきたい。「何と何と炊いた」と書いているだけで味がある文章を生み出せる作家はそうはいない。もちろん何を志すかに関係なく、広くたくさんの人におすすめする。決して埋もれさせてはいけない名作だ。
それぞれ中篇(50〜100ページ)で読み易い。私は表題作よりも、「熱愛」が好きです。男子高校生が便器を異様に磨き上げる話。他人との距離をずらしていく結果生まれる微妙な違和感と多大な切なさを感じ取って欲しいです。
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