石の来歴 (文春文庫)
作者 奥泉 光
価格 407 円
出版社名 文藝春秋
出版年月 1997/02
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    第110回 芥川賞   受賞
レイテで戦友から聞かされた言葉によって岩石に魅せられた男に訪れる苦難。夢と現が交錯する中で妻は狂気に誘われ、子は死に奔る。 新しい恐怖小説の出現。緑色の小さな石は、男の悲惨な生を救ったか?芥川賞受賞作。

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■読者の評価     おすすめ度平均

芥川賞受賞作の中ではお勧めの方です       おすすめ度
 割と芥川賞受賞作は苦手な方だが、これは面白かった。最近の奥泉作品からは想像もできない硬派な文体と内容。戦争中の記憶に苦しめられる男が主人公だが、不思議と重くはなく、読んだ後に考えさせられはするが、暗く落ち込むということはない。同じ体験をした方は、また感想が違うかもしれないが、我々高度成長期に生まれた人間に「その当時のことをわかれ」という押しつけがましさがなく、読んで損はないと思う。


石の来歴最高。       おすすめ度
石の来歴、感動しました。最近芥川賞受賞作ばかりを読んでいるのですが、石の来歴は中でも頭一つ抜けた面白さでした。この作品は、小説好きな男性は必読です。感動すること間違いなしです。・・・ただ、三つ目の鯰のほうはいまいちな感じが否めません。奥泉さんらしい良い雰囲気はあるのですが・・・。


気になる保守的な匂い       おすすめ度
 芥川賞受賞の表題作は、戦争で地獄を見ながらも生き延びた主人公が、戦後社会的にはそこそこの成功を収めながらも家族関係において再び地獄を味わう悲惨な話。
 こんなことを書くと、暗くてジメジメした小説かと思われるかもしれませんが、案外そうでもなく、岩石蒐集の話を軸に据えて過剰な演出を排除しているため読後感は悪くありません。

 ただ前半は、セリフがほとんど無いのは我慢するとしても、中編なのに物語が全然進まず、テンポが悪いので−1点。
 

 同時収録されている芥川賞候補作「三つ目の鯰(なまず)」は父の死をきっかけに先祖から子孫への血脈の継承について考える大学生の話。

 こちらは(表題作同様)難しいテーマを扱っている割りに、23歳の大学生の目線を通して軽快なテンポに仕上がっています。その技量は見事というべきでしょう。

 ただ、いくら小さい頃毎年里帰りしていたとはいえ、東京に生活の本拠があるフツーの大学生が「本家の家名の存続」や「墓を守る」という考えについて思索の出発点から肯定的な態度をとる(主人公は自分が家名を継承して田舎で生活することに関しては都会人として躊躇するが、前提となる「家名は絶やしてはならない」という考えには大して疑問を抱かない)のは違和感がある。
 戦後、少なくとも法律上はこういった思想は否定されており、反発から入るのが通常の姿だろう。
 つまり、主人公のこの部分に関する考え方は一世代前のものであり、これだけが他の日常的な感覚と乖離して分裂状態に陥っている。

 保守的な文壇受けを狙ったのでは?との邪推まで働いてしまう。最終的に肯定に行き着くにしても、せめてその過程ではもう少し振幅・葛藤を見せてほしかった。だから−1点。
 



デビュー作という感じ       おすすめ度
芥川賞の「石の来歴」もいいですが、
「三つ目の鯰」は、月刊文学界で新人賞をとった、奥泉氏のデビュー作と言える小説は、とってもお勧めです。
作風が変わりやすい奥泉氏ですが、これは初期の、ふつうの小説の2作品です。ぜひ、読んでください。


フィクションなのにリアル       おすすめ度
小説というこれ以上ない虚構でありながら、
これほどのリアリティ(=現実)を持つ本書には驚かされた。
「石の来歴」「三つ目の鯰」ともに並々ならぬ筆力を感じさせる。