タイムスリップ・コンビナート (文春文庫)
作者 笙野 頼子
価格 440 円
出版社名 文藝春秋
出版年月 1998/02
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    第111回 芥川賞   受賞
電話の主は「マグロ」か「スーパージェッター」か? 時間も空間もとめどなく歪み崩れていく「海芝浦」への旅はこうして始まった── 「海芝浦」とはどこか、噴出する妄想の旅がはじまる。

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■読者の評価     おすすめ度平均

圧倒的に美しい文章       おすすめ度
圧倒的に美しい文章。まるで音楽のようにそれは暗記すらしたくなる。
そして、自由自在に飛び回る発想。恋愛用マグロ、といった奇想天外な
概念を見事に調理してしまう、その手腕は見事というほかはない。
荒唐無稽なようでいて、その実完璧な予定調和による、微妙なバランスの
上に成り立っていることは最後の一文を見ても明らか。

しかし、これが保守的な人間には全く理解されない世界であろう、という
のは容易に想像がつくのも事実。であるが、この文章を理解できる、という
だけで、自らを選民と称したくなる。

いずれにせよ、これを理解できない感性の持ち主は哀れというほかはない。
それはひとつの宇宙的な体験を損なうことだから。



ちょっと幻想性が強すぎて・・・。       おすすめ度
笙野頼子氏の芥川賞受賞の表題作他2編を収録。

マグロと恋に落ちる夢を見ていた私は、突然掛かってきた電話の主に説得され、片側は海、片側には工場しかない「海芝浦」の駅に向かうが……。

現実と幻の境界みたいなものを探っていく文体は、筆者の独創性を感じます。しかし、キーワードに応じて不断なく変化していく主人公の意識の流れみたいなものが、あまりに突飛で追いかけることができず、私は感情移入できませんでした。置いてきぼりをくらった気分になります。

所収の「シビレル夢ノ水」は、野良猫についていた蚤がだんだん変異を起こしていく、ちょっとグロテスクなお話。私は、表題作よりこちらのほうが楽しめました。



イメージがわかる人にだけ感動的な小説なのかも       おすすめ度
舞台は東京、夏の頃。主人公は著者自身かと思える、小説を書いてくらしている女性。知らない人から電話がかかってきて、JR鶴見線の終着駅、海芝浦に行くことになりました。ねぼけなまこの女性と電話をかけてきた人の話がずいぶんと続いたあとに、女性が重い腰を上げて外出します。女性が考えていることと、実際に移動している状況を示す建物や看板などがズラズラと出てきます。繰り返し出てくるのが映画「ブレードランナー」のイメージ、子どもの頃過ごした四日市、チョコレートの思い出。興味深いのが、沖縄会館での食料品の買い物。ひたすら名詞が並ぶ小説です。「下落合の向こう」は、黄色い西武電車で高田馬場に出ようとして乗った電車の中の話。「シビレル夢の水」は、半年ほど飼っていた迷い猫を元!の飼い主に引き渡しあと、猫が残していったノミが部屋に大繁殖して、ほっておいたら、進化までしてしまう話。どれも、イメージの元となる東京や電車などを知らないと、よくわからないので、わかる人にだけ感動的な小説なのかも。