作者 大岡 昇平
価格 798 円
出版社名 岩波書店
出版年月 1988/05
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    第3回 読売文学賞   受賞
兵士でありながら病ゆえに兵士を拒否された人間がフィリピンの原野に投げ出され、全くの孤独と不安の中で自然と自己を凝視しつつ到達した地点は…。戦争を描きながら戦争小説を超えた文学として高く評価されている『野火』。

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■読者の評価     おすすめ度平均

冷徹に人間性の怒りや国家・共同体論を活写する圧倒的作品       おすすめ度
フィリピンの戦地の自然描写が克明ならば、日本兵田村の心理描写は圧倒的の一言に尽きる。戦争文学と分類されるが、極限状態における人間の本質に迫った文学として、映像芸術等も含めた全芸術の頂点にある作品であろう。あとがきの著名な作家までが本作の奥深さにピント外れなことを書いている(私のもっているのは角川文庫、平成元年改版)ように思うが、敗走し死に彩られた崖っぷちにあって、人間性の怒り、国家とはなにか、共同体(軍隊も含めて)とは、激しく、しかし恐ろしいほどの冷徹さをもって、描き出される。評者もややズレルかもしれないが、ベトナム戦争でカーツ大佐の首をとった地獄の黙示録等を想起した。ただ、映画ではどこかダルなところがある。一切の虚飾を排した本作は、素直に読めば、グイグイ引き込まれて一気に読めてしまう。大岡文学が世界の頂点だ。

この偉大な作品を評することはそもそもできず、各人が己の観念や経験を基に実際に読むしか無いのだが、評者はこの作品をいつも外国に居るときに読むようにしている。本作がどの程度、大岡昇平氏の実経験に基づくのだか不勉強で知らないのだが、不思議と田村がレイテ島で放り出された心理状態をトレースするのに、自らも外国に居るときの方が作品に入って行きやすい。座っていれば飛行機の中で食事が出てくる現代の旅行と較べたりすれば、大岡氏に失礼ではあるのだが・・・