うるわしき日々 (講談社文芸文庫)
作者 小島 信夫
価格 1,575 円
出版社名 講談社
出版年月 2001/02
Amazonの詳細ページへ
    第49回 読売文学賞   受賞
80を過ぎた老作家は、作者自身を思わせて、50過ぎの重度アルコール中毒の息子の世話に奮闘する。再婚の妻は血のつながらぬ息子の看病に疲れて、健忘症になってしまう。作者は、転院のため新しい病院を探し歩く己れの日常を、時にユーモラスなまでの開かれた心で読者に逐一説明をする。複雑な現代の家族と老いのテーマを、私小説を越えた自在の面白さで描く、『抱擁家族』の世界の30年後の姿。

  この著者の他の作品を検索する

著者名をクリックすると、この著者の他の作品を検索することが出来ます。

書名か表紙写真をクリックすると、 Amazon.co.jp の詳細ページに移動できます。

商品を購入する際は、移動先の Amazon.co.jp の購入ページにて、商品価格・在庫の有無や納期をよくご確認のうえ、お手続き下さい。



■読者の評価     おすすめ度平均

好き嫌いで言うと好きではありませんが、       おすすめ度
 名作「抱擁家族」の続編、と作者自らが宣言しています。

 今、このように構成員が壊れてしまっている家族は少なくありません。高齢化社会、弱肉強食の新自由主義に基づく社会が進むにつれ、このように「人生の敗者」になってしまっている成員を抱えた家族はますます増加してゆくと思われます。
 この小説は「私小説」なのでしょうか? たぶん、作者自身が置かれたプライベートな状況に極めて近いのでしょう。しかし、少なくともむしろ作者一流のユーモラスな筆致によって、その絶望的な状況は緩和されているようにみえます。
 しかし、それはあくまでも見かけです。このユーモアはどこから来るのでしょうか? 開き直りなのでしょうか? それとも生への信頼なのでしょうか? たしかに、このような救いようのない状況に対抗するのはこの「ユーモア」しかないのかもしれません。しかしわたくしはそれが極めて無気味に見えます。現実が、そのユーモアの向こうに隠蔽されたようにみえる分、かえって「救いようのなさ」が強調されているように見えるからです。

 ということで、個人的にはあまり好きなタイプの小説ではありません。しかし、好悪を理由にこの名作を推さないのは不公平というものでしょう。



まったくうるわしくはないのだが       おすすめ度
 先妻が病に倒れ、長男が病院に入り、後妻までもが精神に異常をきたしはじめる生涯とは、全くの絶望的と呼ばざる得ないものです。八〇歳も過ぎた高齢の人間を、いったいこの人生という奴は、まだ苦しめようとするのか。

 家族の再建を図ろうとした男が建てた家からは雨漏りがしはじめ、それを設計した建築家は、それは誰のせいでもないのだ、といってくる。人間ができることは、ただその残酷なまでの人生を耐える、ということにしか、どうやらないようだ。では、それをどう耐えるのか。その自己意識の方法に、ひとりの男が全力をかける。

 小島信夫という作家は、読者を選ぶ、といういいかたがよくされます。好きな人にはたまらないのだけれども、ダメな人にはさっぱり、というふうに。
 この小説は傑作『抱擁家族』の続編です。八〇歳を過ぎた最高年齢での新聞連載小説ということで、恐ろしくも悲しく、痛々しく、そしてとても感動的な物語です。

 日本にもこんな凄い作家がいるのだ、と。僕は、小島信夫こそが戦後最大の小説家である、と勝手に断言してしまいます。