作者 安部 公房
価格 500 円
出版社名 新潮社
出版年月 1981/02
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    第14回 読売文学賞   受賞
日常と非日常 ――― ただの虫好きの内向的な中年が、砂漠で珍虫を追っていくうちに砂漠に暮らす村へと迷い込んでしまう。日も暮れて帰れなくなった主人公は一晩だけの宿泊を求める。村人に案内された宿には女がいた。砂を深く掘り、梯子を降りてその中に住んでいる女。非現実的状況のはずなのに、妙に現実的で生々しい女の描写と、砂穴の描写。砂穴に閉じ込められてしまった主人公だが、日が経つにつれて次第にすべてが日常化してゆく。それは馴化なのか、それとも特化された環境の中で悟る人生への諦観なのか・・・本を開けてただの文字列を読んでいるだけなのに、なぜか息苦しくなり、口の中に砂を感じてしまう --- それほどの表現力に満ちた作品。この作品は安部公房の作品の中でもストーリーが分かりやすく、頭の中にイメージを創りやすいのではないでしょうか。安部ワールドを覗くには最適の一冊。

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■読者の評価     おすすめ度平均

高校生の頃、不条理にあこがれつつ、安部公房の不可思議性が好きでした。       おすすめ度
高校生の頃、不条理にあこがれつつ、安部公房の不可思議性が好きでした。
砂の女は、理解を超える不条理性と不可思議性を持っているように思われました。
なぜかは説明できませんが、安部公房が書いているのならそうなのだろうという感じでした。


人生の意味、自由と束縛、男と女の問題を高度な小説技法で描いた傑作       おすすめ度
安部氏は「砂」と「壁」を良くモチーフに用いるが、本作はまさに「砂の壁」に取り囲まれた家の中から必死に逃れようとする男を通して、人生の意味、自由と束縛、そして男にとっての女の存在の意義を問い掛けた作品。

男は昆虫採集のため、ある浜辺に行くが、そこは砂に囲まれた村だった。男は「砂の壁」の上から落とされ、ある家に軟禁状態にされる。家には女が一人いるだけである。女がする事は家が潰れないように砂を掻き出すだけである。男は当然、何回も逃れようと"もがく"が「砂の壁」に阻まれ脱出できない。家の倒壊を防ぐために女の手伝いをして、砂掻きをする始末である。「砂漠は清潔である」とは「アラビアのロレンス」中のセリフだが、本作での砂は暴力的である。無形だが流動的で捉え所のない1/8mmの砂の塊。生きるために、ひたすらその砂と格闘する男と女。人生の意味とは、この砂との格闘のように他者から押し付けられた無為な決め事を繰り返すだけなのか。しかし、男の以前の生活は、この束縛された環境と比べ本当に自由だったのか。色々考えさせられる。

男は逃亡の目的もあって女と関係を持つが、無為な生活の中にも女は必要と言う事か。性の営みも他者に強制された無為な行為なのか。女が終始、"丁寧語"を使うのも怖い。そして、女が示す男への貞操と外界への忌避感も印象的である。高度に抽象化・幻想化された物語でありながら、ザラザラしたリアリスティックな感覚を覚えるのは作者の力量だろう。砂を撒き散らしているのは男自身かと思う程である。まさに、「メビウスの輪」。

高度な小説技法で、生きて行く事の意味、自由と束縛、性衝動の意味を問い掛けた戦後文学を代表する傑作。


比喩。       おすすめ度
比喩が複雑で類似であったり対比であったりが
絡み合っていて、私には難解と感じられる箇所も
ありましたが、それでいて純粋な面白さも失わず、
エンターテイメントとしても申し分ないと思います。
読んでいるだけで汗と砂にまみれてこびりつく
ような不快感、薄暗くじめじめした閉塞感など
その時々で微妙な感覚が伝わってくる描写も圧巻です。



す、砂が纏わりついて…。       おすすめ度
不条理というより現実味を帯びた理不尽な展開にスッと引き込まれます。
さぁどうする?この手の大きな難問を抱え、如何にしてブレイクスルーするかというストーリーを好む当方としては楽しめました。

オチがやはり文学的。部落に監禁されてから最終的に男がとる行動までの表面的な心境の変化に違和感を感じつつも、読後じわじわと男に内在する「教授」というブレのない根幹が故かという解釈もと考えさせられるから面白い。


戦後最大の傑作       おすすめ度
初めて読んでから、かれこれ17年になります。
今でも時々本棚から出して読んでしまいますね。
砂という無機物を限りない手法で表現し、読んでいる者を不快にさせてくれます。
大江健三郎氏が安部公房を「戦後最大の作家」と絶賛しましたが
そのなかでも傑作といえるかと思います。