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■読者の評価
おすすめ度平均
「地元」の純文学 おすすめ度
地方に出かけてとくに観光するでもなく、「ついでに」著名文学者が住んでいた場所というのを訪れることがある。記念館などが建っていると、そこに根ざした文学者の手紙などが展示され、その文学者と、その場所の強い繋がりを感じることがある。封書の宛名書きすらも作家と地域の繋がりを主張しているように見え、なんとなく、「『文学』とはこのようなものであったか」などと感じる。
永井龍男の作品も、作家と地域 -鎌倉- の「繋がり」を印象付ける作品が多い。それが単なる「身の回り」を描いた私小説というだけでなく、まさにその地域にマッチした文体が感じられる。そしてその文体が描き出す登場人物のカタチも「そう、この人物はまさに鎌倉の人」などと思えてくる。
一時期の(?)私小説排撃ブームの頃から、あまり「地域」や「地域の人」を描く作家はいなくなったように思う(鎌倉、京都などはそれでも題材に選ばれることは多いのだろうが)。永井龍男の短編は、その文体も相俟って「懐かしさ」を強く感じさせる。
中村明氏によれば、永井龍男の文章を読んで、そのあまりの見事さゆえに作家になるのを諦めた人すらいると言う。確かに「文章」を、あるいは「文字」を読ませる作家で、今この時代に読んでみるのも面白い作品羨ましいと思う。

