一日 夢の柵
作者 黒井 千次
価格 1,995 円
出版社名 講談社
出版年月 2006/01
Amazonの詳細ページへ
    第59回 野間文芸賞   受賞
日常の中の不安と不思議さ、病、介護など人生の最後に人が向き合わなければならない問題。日々の生活の中の楽しみと苦しみ。日常の内奥に差す光と闇を見つめ、生きることの本質と豊饒を描き切る傑作小説集。

  この著者の他の作品を検索する

著者名をクリックすると、この著者の他の作品を検索することが出来ます。

書名か表紙写真をクリックすると、 Amazon.co.jp の詳細ページに移動できます。

商品を購入する際は、移動先の Amazon.co.jp の購入ページにて、商品価格・在庫の有無や納期をよくご確認のうえ、お手続き下さい。



■読者の評価     おすすめ度平均

ある意味、老後への希望の書       おすすめ度
 “老後”ってどんなもんだろうなって年代になって、そういや文学に“老後”を映し出す作品ってないなぁと思ってたら、こんなドンピシャなのがあった。まだ俺は40代なんだけど、60、70になっても淫夢見るのか、なんて事すら知らない訳で。この短編集を通して漂う“もう社会の中心に今後なる可能性のない自分”って言うんでしょうか(もちろん若くても、社会の中心なんて意識は“セカチュー”みたいな欺瞞は別としてほとんどの人にないんだけど)、その老後とか老人って、割と見方がステレオタイプじゃない?でも、この短編集はそうじゃないんだよね。やっぱ、これまで生きてきた延長線上として“老後”ってのがあって、大半の人は死ぬ前に“老後”ってのを経験する訳だしね。この短編集読んでて、あまりにこれまで“老後”ってのがナチュラルに表現されてこなかったんだなって気がした。ここには老人からみた若者や社会に対する憤懣みたいなことだけじゃなくて、老人からみた同世代への反発、違和感とかもあるし、年齢とか性別みたいなクラスターでなんでも括っちゃうのはアバウトすぎるってのがわかる。あと、これ読んで怖いなぁと思うのは、もう取り返しのつかない夫婦の関係ね。お互い諦めきっているんだけど、時々ほとばしる「なんでこんなのと一緒になっちゃったんだろ」って悔恨ね。やっぱ時間って不可逆的なもんなんだよな。一方でこれ読んで良かったのはジジイになるのもそんな悪いことじゃないな、って思えること。状況的にはチンケだったりセコかったりイジイジしてたりする部分ももちろんあるんだけど、主人公が基本みんな楽観的っていうか、処世術身に付けているっていうか、たくましさ、飄々としたところが感じられて、微笑ましいっていうか心強いっていうか。現役よりはゆったり流れている時間っていうのも羨ましいし。ある意味、老後への希望の書ですな。十二編を執筆順に並べた構成も良かったです。