ファンタジスタ
作者 星野 智幸
価格 1,785 円
出版社名 集英社
出版年月 2003/03
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    第25回 野間文芸新人賞   受賞
フットサルとリフティング占いに依存している、わたし。ダキマクラに夢中のリョウジとの同居。そんななかで行われる首相選挙。性・家族・職業・国家の“らしさ”に違和感を抱える人間を描く作品集。

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■商品案内

???濃密な男女の関係を幻想的に描いた『目覚めよと人魚は歌う』で第13回三島由紀夫賞を受賞した星野智幸。端正な文章で、どこか異国を感じさせる作風を得意とする作家である。本書は、日系移民を撮り続けている映像作家のビデオ作品に着想を得た「砂の惑星」、フットボールを題材にした野間文芸新人賞受賞作「ファンタジスタ」、ハイウェイを暴走する若者が奇妙な労働に関わる「ハイウェイ・スター」の3編を収録。どれも日常と非日常という、ふたつの要素を併せ持った作品である。

???たとえば「砂の惑星」では、集団自殺事件を起こした小学生と、森で暮らすホームレスたちの姿を対比させて描く。森に現れる老人の一人芝居を通して、かつてドミニカ共和国で行方をくらませた男の消息が、寓話的に語られる。また「ファンタジスタ」では、スポーツを介した仲間同士の交流を軸にしながら、元プロ選手が立候補した首相公選をめぐる物語を展開。フットボールと政治という、一見関連性のないものを見事に織りまぜてみせる。肉体の消滅と再生をテーマにした「ハイウェイ・スター」も含め、平凡な主人公に導かれ読み進めるうちに、読者はいつの間にか別世界へと引き込まれていく。

???移民問題、政治といった近寄りがたいテーマを組み込んでいながら、押しつけがましくならないのは、物語を継いでいくなめらかな筆致のおかげである。また各作品に、南米地域やフットボールという、星野の読者にはお馴染みの素材が散りばめられているのも特徴だ。これらが独立したそれぞれの小説に共通点を与え、本書独自の世界を盛り上げている。(砂塚洋美)



■読者の評価     おすすめ度平均

独特の雰囲気をしっかりもったホシノワールド       おすすめ度
3つの中編小説の1つが「サッカー小説」=「ファンタジスタ」。他2編のうち1つは芥川賞候補作である。
どの作品にも幻想的と呼ぶにはやや泥臭い、というかややチープな、それでいて独特の雰囲気はしっかりもった〈ホシノワールド〉が存在している。
「ファンタジスタ」は近未来というよりはむしろパラレルワールドに同時並行的に存在する〈もう一つのニッポン〉の数年後の姿のよう。
「大統領」に立候補したサッカー界の大物。階層化が進み隊列が長くなる社会。
「国際化」に埋没していく大多数の中下層〈ニホンジン〉。フットボールと呼ばれるようになった〈ニホンのサッカー〉。主人公の恋人?が愛用する異様な「抱き枕」。
キーワードとして使われているボールリフティング。
リアリティーがあるようなないような。幻想的であるようなないような。
そこに〈サッカーの真実〉はあったか?〈人生の真実〉はあったか?
 〈閉塞感〉だけはあった。
「現代社会を覆う閉塞感」などとこの作品世界の〈閉塞感〉を対置させるのはあまりに陳腐に過ぎよう。〈閉塞感〉はそのものとして受け入れよう。
そのうえで、その〈閉塞感〉を突き抜けた向こうにある〈ナニモノか〉の存在を本書のなかに感得できたか?僕は感じることができなかった。存在の暗示すらも。
閉塞され、その向こう側に待つ〈ナニモノか〉を感じ取れない世界。それもまた〈サッカーの真実〉なのか。