遮光
作者 中村 文則
価格 1,470 円
出版社名 新潮社
出版年月 2004/07/01
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    第26回 野間文芸新人賞   受賞
愛する者を失った「私」は、他人が知れば驚愕する、ある物を持ち歩いている。しかし、それは狂気なのか…。陰影濃く描き上げた喪失と愛の物語。

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■読者の評価     おすすめ度平均

むしろこれで芥川賞を       おすすめ度
 やっとけばよかった? 
 相変わらず暗い話だ。しかし、デビュー作の『銃』よりも、僕はこの『遮光』を今のところ中村文則の最高傑作だと思う。
 ある意味、恋愛小説だろうか。死んだ恋人の指をホルマリン漬けにして持ち歩くという、『銃』とテーマが被っているような話。
 主人公には、まったく自分というものを持っていない。安いテレビドラマやであった人々が発した台詞をそのままなぞるだけで、彼は自分の意志をほぼ持っていない。怒るのにも怒ろうと思わなければ怒れない。自分のしていることを演技だと思い込み、その思い込んでいることを演技だと思う、究極の負のスパイラルに翻弄されていき、ひたすらに「典型さ」を求めていく。
 虚ろな文体とは違い、リアルに描かれた外面描写は著者のお手のものだが、今回は主人公の性格からして、それが特に効果的になっている。
 そして、僕が評価しているのは、そんな話でありながら、主人公がひたすらに一生懸命なところだ。狂ってるんだけど、何かをめちゃくちゃ頑張ってる。
 まぁ、それがまた逆に物悲しいんだけど。とにかく、普通の人にはあまりお勧めしません。この人の作品は暗すぎます。


光は遮られた       おすすめ度
 失ってしまった恋人の小指をビンにつめ持ち歩く男.その行為に彼は束縛され,一般社会からの光を遮ってしまう.
 自分の周りを嘘で固め,感情無き暴力を振るう.彼に違和感を抱き,徐々に離れてゆく周囲の友人達.久遠に続く虚無の世界.そこには一筋の光も差し込むことはない.


ショボくなくていい       おすすめ度
文藝作品がまるでテレビ番組と同じくらい軟調なものが多く退屈していたが久しぶりに「ん!」と思う作品に会えた。
村上龍氏の芥川受賞作品のような読む者に陰うつかつ快活に「違和」を与える作品だ。
確かに歪んだ光景描写と言える。
苦手な人も多いかも知れない。
しかし誰にもカタチは違えども必ず捨てたくない大切なモノやコトがある。
そこを意外な事象で表現したのが本作品だ。
1ページ目をチラリと見ればだいたいどういうトーンの作品なのかはわかるものだが、この本は歪んだ暗さが漂う。
しかし軟調で軽薄なものはイヤになるくらいたくさんあるのだから、これはこれでいいと思う。
著者の他の作品をいま読んでいるが、著者はだいたいこういう具合に歪みというか暗さというか、人に潜む陰の部分を同じく陰からのぞくようにあぶり出している。
著者には変遷しないでいてほしい。
これはこれでいいのだ。


純文学・・・・というのでしょーか?こーゆーの。       おすすめ度
なんともいえない暗い話にしたかった作者の気持ちはわかるのだけれど、なんていうんでしょうか?なんか作為的なものを感じるんです。やたらと現実離れしたものを並べ立てて「ね?異様でしょ?異様でしょ?」ってのを見せびらかしたくなる作者のアピールが逆に煩わしく感じられてなりませんでした。
こういうのが最近はウケているのかもしれないけれど、私はこういう「アー読み終わった」って言って、そのまま始末に困るような本をとても推す気にはなれませんでした。読んではみた。なんか心に残った。でもしばらくしたらシャボン玉のように消えた。本棚に目をやるとこの本のタイトルが目に留まった。でも手に取る気にはならなかった。これを名作と呼べるのかな、と。こういう作家が芥川賞獲ったりするんでしょうね。だから一発屋が多いのかも。ま、私は好きにはなれません。


瓶のなかにあるもの       おすすめ度
 「私」の美紀にたいする思いを、真実なのか狂気なのか純愛なのか、主人公自身もよくわからないまま進む話に、めげて暗くなりそうな内容なのですが、どかこ心に訴えてくるものがこの小説にはありました。
 まさに現代的な狂と哀が複雑に入り組み、その中心にはぽっかり穴が開いていて、そこに何があるのか? 「私」はどこにでもいる人間かもしれません。この男の考え方を完全否定できない複雑な心境の読後です。
 今年の芥川賞候補作の中では一番、わかりやすく面白い作品だと思います。