ぐるぐるまわるすべり台
作者 中村 航
価格 1,300 円
出版社名 文藝春秋
出版年月 2004/06/09
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    第26回 野間文芸新人賞   受賞
「ヘルタースケルター」を聴いてあなたは何をしますか。 塾講師の傍ら、僕は教え子ヨシモクの名を騙ってバンドを募集した。ボーカルの中浜に自らの分身を見た瞬間、僕の中で物語が始まった…。「リレキショ」「夏休み」に続く「始まりの」3部作完結篇。

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■読者の評価     おすすめ度平均

僕の中の「中村航」最高傑作       おすすめ度
中村航ファンからはあまり評判のよくない本作です。多くの中村さんファンが
文藝賞を受賞したデビュー作『リレキショ』や話題になっている『100回泣くこと』
の方が高評価のようです。確かに僕も日常のちょっとした不条理を描いた『リレキショ』
は大好きな一作ですが、最近の『100回泣くこと』などの作品はあまり好きではありません。
中村さんの「良さ」が凝縮されているのが本書『ぐるぐるまわるすべり台』だと思うのです。
惜しくも受賞は逃しましたが芥川賞候補になり、その後、野間文芸新人賞を受賞した作品
です。芥川賞選評で選考委員の山田詠美さんが絶賛していました。

導入、文体、題材、タイトル、キャラクター、雰囲気…どれを取っても最高です。

そして、とてつもなくキュートで余韻を残してくれる鮮やかなラスト。
素晴らしいの一言です。

できることなら、中村さんに今の路線からこっちの路線に戻ってきてほしいです。



中村航さんの良さ。       おすすめ度
それがわからない。というか僕には今一つ理解できない。

すごく淡々と物語を進められる。
読みやすいし、ほんわかした気持ちになるのだけれど、で?
となってしまう。軽すぎて、うそ臭いって感じに思えてしま
う。

野間文芸新人賞の中村文則さんの遮光のが個人的にはある意
味(テーマが)わかりやすくて好きかも。



表紙の絵はいかがなものか       おすすめ度
読み終わったあとは、妙に顔がにやけた
ウザくない程度に気の利いた文章で、読みやすい

まあまあいい本読んだな、という気になれる作品



音楽的にもおもしろい       おすすめ度
中村航氏は音楽をやっていた経験があるそうで、
この物語の核となっているビートルズの「ヘルタースケルター」をはじめ、
フレットレスベースとフレッテドベースの違いによる純正律の話や、
ドラマーは属性だ、なんていう記述や、
バンドやってる人には、「確かにそうだ」と感じられる部分が随所にあります。

文章はどこまでもなめらかで優しいです。
中村航は悪人を書かないことが好ましく思える稀有な作家だと思います。
ユーモアがあって、リズムがあって、
そこはかとない切なさがあって、優しさがふんだんにあって。

次回作に期待してます。



螺旋状に、人生は進む。       おすすめ度
自分の人生を創るために、動き始めた主人公・小林の、非常に内省的なところと、バンドを組むために行動するような面とが、うまく組み合わさって描かれています。
文体は嫌味なく、適度な勢いがあって、引きこまれました。
塾の生徒のヨシモクとの関わり方は、動きだそうとする小林との対比のようで、でもヨシモクをとてもよく理解して、温かい目でみているのがわかります。塾の教師の仕事も、丁寧にこなし、バランスがとれた人物であると思えます。中村氏は何気ない日常をも、大切に描いていると感じます。
自分の物語を紡ぐために、バンドのメンバーを集めたのに、物語は中浜に託されることになるところなどは、この物語の中の物語の始まり・・・・・・という感じで、面白味があります。彼は動かなかったのではない。一周回ったんだという小林の言葉に、彼の確信めいたものを感じます。
ラストで、夕焼けのなか、ヨシモクの髪を切りながら、二人会話するシーンは、美しさと内に秘めた力が、よくわかって、ちょっとないくらいの爽快感でした。
「月に吠える」は、小林が組もうとしたバンドのメンバー 、哲郎と千葉の物語。こちらも、仕事の手際の場面は冴えているし、二人の息がぴたっと合う瞬間などを織り込んで、気持ちのいい作品に仕上がっています。もっと、中村航氏の作品、読みたいなあと思わせる作家ですね。期待しています。