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■読者の評価
おすすめ度平均
上海バンスキングと双璧をなす傑作戯曲 おすすめ度
上海についての戯曲と問われれば、まず名前の挙がるのはオンシアター自由劇場の看板演目、斎藤憐の「上海バンスキング」だろう。しかし地味ながらこの作品も忘れてはならない。本作は第27回(1991年、平成3年)谷崎潤一郎賞も受賞している作品だ。
『シャンハイ・ムーン』には賑やかなジャズシーンがあるわけではない。可憐なヒロインも登場しない。主人公は身体中病魔に蝕まれた初老の作家であり、躍動感溢れるシーンも無い。あるのはただひたすら地味な、作家魯迅の地下潜伏生活の場面だけである。
しかしそこは稀有な戯曲作家、井上ひさし氏の面目躍如というところである。作家魯迅に自らを吐露させるあるテクニックを用いながら、喜劇性を持って物語は進行していく。作者自ら認めているように!、現実の魯迅の潜伏生活とはやや時間的なズレはあるものの、巧妙に仕組まれた劇作に笑わされ、最後静かな感動を覚える名作だ。

