ミーナの行進
作者 小川 洋子
価格 1,680 円
出版社名 中央公論新社
出版年月 2006/04/22
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    第42回 谷崎潤一郎賞   受賞
    本屋大賞 2007年   受賞
美しくてか弱くて、本を愛したミーナ。あなたとの思い出は、損なわれることがない――懐かしい時代に育まれた、二人の少女と、家族の物語。

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■読者の評価     おすすめ度平均

時代・地域の空気の描き方が秀逸!       おすすめ度
本書の舞台となった街は、私の生まれ育った街であり、
本書の舞台となった時代に、私はちょうどミーナの年の頃だった。
つまり、あの時代のあの場所の空気を全身全霊で知る私にとって、
本書は思いっきりノスタルジィに浸れる素敵な1冊だった。

今は無きあの時代の芦屋の風景を幾度も私の内面に展開させてくれた筆者の見事な筆致に、
終始、読みながら賞賛の拍手を送りつづけたことをまずは述べたい。
そう、あの時代の開森橋から高座の滝へ続く、芦屋川沿いは小説の通りだった。
重い扉を開くとどこからともなくひんやりとした空気が漂った打出の図書館も、小説のままだった。
山の手の洋館の暮らしぶりも相当に上手く描ききれている。
小川洋子が描く小説が、ファンタジーでありながら現実から逸脱せず、多くの読者の心を掴むのは、
こうした小説の舞台を厳密に設定し、一糸たがうことなく再現してみせようとするその姿勢によるものだと気付かされ、その手腕に頭を垂れるしかなかった。

そして、あの優美な場所に「カバ」を登場させるという大胆な発想に、小川ファンタジーの真髄を見た気がした。
Y小学校につづくあの坂道を、少女を背中に乗せた小さなカバに登らせるなんて、一体誰が思いつくと言うのか。
奇想天外ともいえるその大胆さが彼女の小説に躍動感を与え、読者に迫る印象を残すことに成功していると言えるだろう。
この1冊によって、私の胸に大切にしまわれていた「聖地」が懐かしい場所としてだけではなく、小川の手によって一気に新しい世界の舞台として登場した。
読後、怖ろしい小説家だと驚嘆しきりだった。

回想から現実にフェードアウトしてゆく終わり方もかなり心憎い。
おかげでいつまでも心に残る1冊になってしまったではないか。
私的に思い出すだけでワクワクする最高のファンタジーであることは間違いない。
ぜひ、あの「時」を共有する人々に読んでもらい、この感動を分かち合いたいものである。


映画にしたくなるような1冊       おすすめ度
「博士の愛した数式」で一気にブレイクした小川さんですが、我が家にはもうかなり前から何冊もありました。
私の最初の頃の小川さんの印象は、なんというか... 
「見ちゃいけないものを平気で見せたりする女の子」。
きっと、この人はムシを分解してみたり、かさぶたをはがして、たら〜っと垂れる血をずっと見ているだろうな。
そんな思いがしていました。

ところが、「博士の愛した数式」では、『この人、もしかして子どもでも産んだ?』と思えるほど柔らかな視点で驚かされました。
本を閉じた時、幸せな満足感いっぱいのため息をついて、いい本見つけちゃった。と思ったものの、あっという間に世の中に知れ渡れ、ちょっと残念な気持ちにすらなりました。

「ミーナの行進」は、「博士」と同様、温かさいっぱいのお話です。
ミーナの細く、柔らかな髪が、ゆるい風に舞う様子まで、目に浮かんでくるような美しい描写。
トモコがあこがれの人と話す時、かけられる言葉への罪悪感を覚えつつも、押さえられない小さなときめきの描写。
図書館の匂い。ドイツ人という、お屋敷のおばあさんの描写....。
なんて、小川さんは表現が上手な人なんでしょう。
このお話もきっと、「映画にしてみたい。映画で、緑や風を表現してみたい。」と思う監督が多くいるだろうけれど、映画化してほしくないなー。


全員揃っている。大丈夫。誰も欠けていない。       おすすめ度
このせりふは、主人公の朋子がいつもはこころがそれぞれのところへいってしまっている親友ミーナの家族が揃って海水浴へいった貴重な幸福すぎたある夏の日の写真をみてつぶやく言葉です。
小川洋子さん独特の世界が静かに柔らかに展開されるなかで、この言葉でもう切なくてたまらなくなってしまいました。私の年代(40歳です)になると、祖父が逝き、祖母が逝き、子供が親離れをしていき、兄弟が不通になっていきます。その代わりに、得るものも確かに多いのですが、子供の頃に大切だったものとは明らかに違います。
その愛おしさを思うと、この朋子の大丈夫、と言った言葉が本当に自分の胸に本当に響くのです。
子供の頃に、いろいろへんてこだったことが実は当たり前のことだったり、普通だったことがとても贅沢なことだったりしたことに思いが巡る、これまでに最も心に静かにそっと深く深く響いた作品の一つです。


ポチ子って名前がこっけいで愛らしい♪       おすすめ度
時代は大阪万博、ミュウヘンオリンピックがあった昭和のよき時代。
中学一年の主人公が、従姉妹のミーナが住む芦屋の豪邸ですごした、
思い出深い1年間の話。

虚弱とはいえ、小学校に“カバ”に乗って通学するミーナ。
昭和のお金持ち生活が、破格過ぎておもしろい♪

家族みんながそれぞれに、小さな悲しみや寂しさ不満を抱えつつも、
心を保ってお互いを思いやっている姿がほのぼのとして、安心感を与えてくれます。
生まれているはずもないのに、記憶のどこかで同じような体験をした覚えがあるような
ノスタルジックな想いにさせられる一冊。


私はこちらの方が好きです       おすすめ度
小川洋子さんは「博士の愛した数式」しか読んだことがありません。あちらもよかったですが、私はこちらの方がハマりました。
初めの方のおじさんに連れられて初めて「クレープシュゼット」を食べるシーン。私の子供時代、外食はまだまだイベントになるくらいの贅沢でした。幼い頃に喫茶店に入ってクリームソーダやパフェを食べたことなど、今でも鮮明に覚えています。初めて「クレープシュゼット」を目にした朋子の描写が、その時のさくらんぼの味やソーダの鮮やかな緑色を瞬時に頭の中に蘇らせてくれました。
途中まではノスタルジックなムードで進むのですが、ミュンヘンオリンピックの日本男子バレーへの傾倒あたりから、物語がダイナミックに動き始めます。ミュンヘンオリンピックの記憶はありませんが、ちょうど映画「ミュンヘン」を見た直後だったせいもあるのでしょうか、とても臨場感がありました。
○○さんのデートシーンをミーナが目にしないように奮闘したり、おじさんのいるマンションまで行っちゃったり…。私もすっかり、自分が小さく世界が大きかった頃、友達とケンカしちゃった程度のことが世界の終わりのように思えた小さい女の子に帰ってしまいました。
前の方が書いておられた「大人の童話」という言葉が本当にピッタリですね!