グロテスク
作者 桐野 夏生
価格 2,000 円
出版社名 文藝春秋
出版年月 2003/06/27
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    第31回 泉鏡花文学賞   受賞
世にも美しい妹ユリコを持つ「わたし」は、ユリコと離れたい一心でQ女子高を受験して合格し、スイスに住む両親と離れて祖父とふたり暮らしを始める。エスカレーター式の名門Q女子高は厳然とした階級社会であった。佐藤和恵という同級生が美人しか入れないという噂のチアガール部に入ろうとして果たせず、苛立つのを、「わたし」は冷やかに見守る。 夏休み前に母が自殺したという国際電話が入る。ユリコが帰国するというので、「わたし」は愕然とする。同じQ女子高の中等部に編入したユリコは、その美貌でたちまち評判になるが、生物教師の息子木島と組んで学内で売春し、それがばれて退学になる。和恵はQ大学から大手のG建設に就職した。―そして二十年後、ユリコと和恵は渋谷の最下層の街娼として殺される。

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?『OUT』 『柔らかな頬』など、単なるミステリーにとどまらない作品を生み出してきた桐野夏生が、現実に起きた事件をモチーフに新たな犯罪小説を書き上げた。自身をして「その2作を超えて、別のステージに行ったかな」と言わしめた作品だ。

???主人公の「わたし」には、自分と似ても似つかない絶世の美女の妹ユリコがいた。「わたし」は幼いころからそんな妹を激しく憎み、彼女から離れるために名門校のQ女子高に入学する。そこは一部のエリートが支配する階級社会だった。ふとしたことで、「わたし」は佐藤和恵と知り合う。彼女はエリートたちに認められようと滑稽なまでに孤軍奮闘していた。やがて、同じ学校にユリコが転校してくる。

???エリート社会に何とか食い込もうとする和恵、その美貌とエロスゆえに男性遍歴を重ねるユリコ、そしてだれからも距離を置き自分だけの世界に引きこもる主人公。彼らが卒業して20年後、ユリコと和恵は渋谷で、娼婦として殺されるのだった。

???いったいなぜ、ふたりは娼婦となり、最後は見るも無残な姿で殺されたのか。そこに至るまでの彼女たちの人生について、「わたし」は訳知り顔で批判を込めて語っていく。しかし、ユリコと和恵の日記や、ふたりを殺害した犯人とされる中国人チャンの手記が発見されるに従い、主人公が本当に真実を語っているのか怪しくなってくる。つまり「わたし」は「信用できない語り手」だということが明らかになってくるのだ。その主人公に比べ、日記であらわになるユリコと和恵の生き様は、徹底的に激しくそして自堕落である。グロテスクを通り越して、一種の聖性さえ帯びている。

???読み手は何が真実か分からなくなるかもしれない。しかし読み終わったとき、この物語に不思議な重層性を感じるだろう。(文月 達)



■読者の評価     おすすめ度平均

少女漫画の世界       おすすめ度
おばさんの書いた少女小説。
これを読んで、人間のどろどろした部分、女の怖さ、いやらしさを描ききってる、なんて感想を漏らすのは、幼稚だと思う。この社会で何十年も社会人をやっていれば、結婚して一人の女と嫌でもずっと向き合っていれば、誰だってそんなこと骨身に沁みて感じているはず。
それにしても慶應付属の子女たちから抗議は出なかったのだろうか。私たちいくらんでもこんなに卑俗で劣等な人間じゃないわよ、と。
思春期の娘が、友達の家に遊びにいって、建付けが安普請だという感想を抱くだろうか?これはまさに通俗ななおばさんの視線です。人間を戯画化して描いて大人の鑑賞に堪えるには、よほどの知性が必要。筆者は自分以外の人間を、どこかで舐めているのではないですか?


とことん堕落すること       おすすめ度
 和恵の「堕ち」方は,読んでいてつらくなった。最初はホテトルで身を売っていたのに,年をとったからと解雇され,渋谷で立ちんぼうに身を落とす。8000円で身を売り,その男の指示で,さらに2000円で2人の男に身体を売る。にもかかわらず,自分はQ大を卒業して,G建設に勤めていることをプライドにして生きている。最後のころには,会社でも話題になっていて,殺されなくても,早晩彼女は破滅していたに違いないと思わせる。
 和恵の日記である「第7章 肉体地獄」を読むためだけでも,この分厚い本に挑戦する価値はあると思う。分厚いけど,すぐに夢中になって,結局1日で読んでしまった。


やっぱり天才だと思う。       おすすめ度
繰り返し何度も何度も綴られる、美しい妹への妬みの言葉。これでもかこれでもか、というくらいにしつこいのに、なぜか読後感はそうくどく感じない。 そして、桐野夏生ならではのスピード感のあるリアルな表現。やっぱり、この作家さんは天才だと思う。


桐野夏生という作家だから生まれた小説       おすすめ度
以前より「東電OL殺人事件」に興味があり、佐野眞一氏のノンフィクションは既読でしたが、
男目線から書かれたという印象が強く、物足りなさを感じていたので、この作品を手に取りました。

桐野夏生氏の作品は「OUT」しか読んだことがなかったのですが、女性の凄まじい部分を
描く筆力は凄いと思います。
醜悪さの限界を曝け出し、人間はどこまで堕落出来るのかを描いた小説であると思います。
佐野氏の作品で満たされなかった部分が描かれていたので、私は引き込まれてしまいました。

ラストに批判があるようですが、私にはラストなどどうでもよい、と感じるような作品でした。

この感覚は男性には理解不能かもしれませんね。



うんざり       おすすめ度
現実は汚いものが多く,それを見つめ受け入れる必要があるのは分かる。
しかし,その表現としてこれだけのボリュームが必要だったのだろうか。延々と続く暗い話しに気が滅入るだけではなく,正直退屈さえ覚えた。時間のない人は最後まで読む必要はないんじゃないかと思う。大きなどんでん返しがあるわけではなく,最後まで同じ調子の話しが続くのだから。