武蔵丸 (新潮文庫)
作者 車谷 長吉
価格 460 円
出版社名 新潮社
出版年月 2004/04
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    第27回 川端康成文学賞   受賞
ともに五十歳近い初婚夫婦が、一匹の兜虫の生と性のすさまじさ、むごさを見ながらその死を看取る。

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■読者の評価     おすすめ度平均

自分の”一番寒い場所”があります       おすすめ度
私小説だけど、決して内に向かった独り言では無い、外に向かっている。それは明らかに読み手に向けて晒されたトゲの様に。どこまで本当なのかわからない。しかし、ある意味、全て真実だとも思う。白痴群、狂、功徳、愚か者、武蔵丸、一番寒い場所、ここに収められている短編のタイトルだけで、何故か惹きつけられてしまう。読みながら感じる悲しみ、痛み、むごさは、読んでいる自分自身の姿でもあるようで「あっ」と思う。町田康が好きな人なんかは気に入るんじゃないかな。


人間であることのやるせなさ       おすすめ度
 人間が寒々しく描かれる。読むほどに、人間であることが切なくなる。やるせなくなる。ほら、こんなに素寒貧で能無しなんだ、人間なんて…という自嘲のように虚飾をはいだ人物像が描かれる。飾り立てた人間からは、虚飾の胡散臭さが隠しようもなく暴かれる。
 いっそ、武蔵丸と名づけられたカブトムシのほうが、無心なだけに美しく思えてくる。人間の本質を見抜こうとし、またそんな大それた自分を「文士なんて人間の屑である」と吐き捨てる。
 太宰も三島も、車谷と地続きである。私は今年になってようやく車谷という作家(作品)に出会い、びっくりしている。愉快な読後ではないだけに、他人に勧める気にはあまりならないが、私はこの人をこれからも読む。