さよならアメリカ
作者 樋口 直哉
価格 1,260 円
出版社名 講談社
出版年月 2005/07
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    第48回 群像新人文学賞   受賞
新世代の感覚と文学の伝統。これぞ小説の未来形。 ぼくは袋を被って生活している。袋の後ろには「SAYONARAアメリカ」というロゴが。噂で聞いた、袋族の少女と出会うために、ぼくは街を彷徨う。突然現れた、異母弟を名乗る男との共同生活。巡り会うことのできた袋族の少女への思い。 純粋な感性と倒錯的視点が現出させた、現代文学の新しい姿。

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■読者の評価     おすすめ度平均

うまいですよ       おすすめ度
 ストーリー展開としては非常にうまい。手記の形態をとった少しだけ語りかけ調の文体。それから袋をかぶって、同族である「袋族」を探す僕。内面世界にひきこもっているんだけど、でもいわゆるひきこもりとは違い、どっちかというとホームレスにシンクロする。
 そこかしこに流れる一生懸命さと、幻想的なムードが心地いい。空っぽなんですよね。アイデンティティは僕に宿っているわけじゃなくて、袋に宿っているわけだし。ラストの病院で内面から外への脱出をはかろとするが、さてさて。
 ひとつ。たまに目を疑うような比喩表現が出てきますが、我慢してください。比喩表現は下手ですよね、ぶっちゃけ。


倒錯的視点なのか!       おすすめ度
群像新人文学賞受賞作品です。帯に「純粋な感性と倒錯的視点が現出させた、現代文学の新しい姿」とあり、読み出して直ぐに何の話なのか納得出来るまで少し時間が必要な作品でした。
袋を被った状態から覗き見た世界と、袋をとった世界との単純な比較では無いのは明白で有るが、これが倒錯的視点とは言えない様にも感じる。
何故なら多かれ少なかれ人は心の何処かで、現実社会という存在そのものを、そして自分自身の存在さえ、時として疎ましく思ったり逃げたいと思ったりした事が有るのではないだろうか!
そしてそんな自分が唯一落ち着ける場所・・・・それが袋だったのではないかと思う。その意味で現実社会の中の自分という者を再考させてくれる作品で有った事は間違い無いと思う。


袋男の恋       おすすめ度
 実は作者と同姓同名なので、群像新人賞を受賞したときから注目していた。
 選考委員が安部の名作「箱男」をあげているが、箱男とは根本的に違う作品であることは間違いない。「箱男」は箱のなかに閉じこもって街や人から隔絶して生きる、いわば引きこもり。「袋男」は袋族という仲間を求めて街を彷徨う、いわば安部が書いた箱男と反対の立場を作者は取っている。これは完全に匿名であるネットワーク社会で出会いを求める若者の姿と重なって見えて興味深い。ストーリーが袋女との恋愛を描いた筋立てになっているのはおそらくそのためだ。
 しかし、話を収束させるために仕掛けられたラストにはいささかがっかりしたので星マイナス1


「箱男」に挑戦した「袋男」       おすすめ度
樋口直哉「さよならアメリカ」を一読して思ったのは、まさに安部公房の「箱男」との類似だった。
いや、類似というのは間違っているのかもしれない。この作品は、安部公房というビッグネームの代表作である「箱男」に真っ向から挑戦した作品なのではないだろうか。

と言っても、まったく「箱男」には敵わない。惨敗だろう。それは当たり前だ。この作品は作者のデビュー作品である。そう、デビュー作、新人なのだ。
新人が「安部公房」という名の「箱男」に挑んだことは評価すべきである。普通はできることではない。

 SAYONARA アメリカ

作中のこの言葉が示すように、作者は安部公房の作り出した「新しい世界」を超えようとしたのではないかと私は考える。

なお、この作品は落選こそしたものの、第133回芥川賞の候補作品に選出された。