その街の今は
作者 柴崎 友香
価格 1,260 円
出版社名 新潮社
出版年月 2006/09/28
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    第23回 織田作之助賞   受賞
わたし、昔の大阪の写真見るのが好きやねん。その、どきどきの中毒みたいな感じやねん-。過ぎ去った時間の上に再生し続ける街の姿に、ざわめく28歳の気持ちを重ねて描く、新境地の長篇。

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■読者の評価     おすすめ度平均

その街の今は、そして昔は・・・       おすすめ度
レビューの評価も高く期待をしていたが、
なぜ、こんなに高いのかが、わからなかった。


昔の街の風景が大好きな28歳女性と、
その周りをとりかこむ人々のお話。

淡い恋もある、
この年齢だから不倫もある、
合コンもする、アタリハズレは出てくる。

なに気ない日常が淡々と描かれる。
大阪の雑踏が、ゴミゴミさが、全く感じられない。


作品世界を好きな方々が、
きっとレビューを書かれたのだろう。

私には、普通の作品にしか思えなかった。
ただ、他の作品も読んでみたい気はする。
なんだか、摩訶不思議な作品でした。


染み込む       おすすめ度
初めて柴崎友香さんの本を読んだ。
難しい書評は分からないけれど、思いついたことが一つある。
数年前に流行したニアウォーターと呼ばれる清涼飲料水、それに似ている。
水のようで無味ではなく、味があるようで殆ど水であるニアウォーターとこの本がなぜか同じように感じられた。
両方とも体にすっと染み込むからだろうか。
とりあえず、この本を読んで心が潤ったのは確かだ。


ほんものみたいな日常       おすすめ度
 保坂和志が、この作者を、描写のできる若手としてベタ褒めだったので、読んでみたいな、と思っていた。書店で手に取って、一頁目を読み始めたら、もうこの小説が気になって、レジに持って行った。その書き出し。「ゆっくりと、だけど決して停まらずに進むタクシーがずいぶんと道路にはみ出した看板と自転車をどうしてひっかけてしまわないのか、感心して眺めていた。羊羹みたいに黒く光る車体には、さっきまでいた店の看板の白と青のライトが映って流れていった。なんの音が、というわけではないのに騒々しくて、夜の心斎橋の感じだと思った。エアコンで冷え切った店から出てきたばかりなのに、もう肌には汗が滲みかけている」自分の行ったことのない初秋の夜の心斎橋が鮮やかに浮かび上がり、この語りにずっとついて行きたい、と思ったのだ。
 語り手は、勤めていた会社が倒産して、街のカフェでアルバイトしている女の子だ。女の子、という年でもなくなってきたので、つきあいで合コンにもよく顔を出すが、うまく行かず、帰りにつきあいで寄ったクラブで知りあった良太郎という男の子と何となくいい感じになるけれど、すぐに恋人になるわけではない。
 一方でこの女の子は、大阪の昔の写真を見るのが好きで、知っている場所が映っている写真を眺めては、現在の場所と比べ、映っている人の姿に見入り、思いを馳せる。そう、作者も語り手も、カメラ的な目線を持っていて、その目に、午後のカフェや、自転車で行く近所の雑貨屋や洋服屋の並ぶ道や、アジア料理の店やお好み焼きやが映る。昔の写真が、確かにそこにあった現実を写しているように、語り手の目に映る光景もほんもので、そこに描かれる友人たちや良太郎との日常も、ほんもののように思える。
 恋が始まりつつあるラストも好きだ。ラストの前の、夜の坂道のシーンも好き。きゅっと胸がせつなくなった。


「街」文学の傑作       おすすめ度
いろんな感情を心の底で渦巻かせている人々が行きかい、そして、ひっそりと
しながら大きく「呼吸」をしている「街」に生きる主人公を描いた傑作文学。

デビュー作『きょうのできごと』が映画化されたことでも有名な著者の最新作です。
第23回織田作之助賞を受賞しています。おめでとうございます。
惜しくも受賞はなりませんでしたが、第136回芥川賞の候補作にもなりました。

そんな話題の『その街の今は』という小説はとにかく楽しい。特に何か事件が起きる
わけではないけれど、一つ一つのシーンに込められたパワーが伝わってきて、やられ
ました。素晴らしい。
とても読みやすい簡潔な文章。一人称で書かれていますが、押し付けない客観的描写
と会話文の絶妙な関西弁が上手く絡み合って読み心地が最高です。
噛みしめるたびに「旨さ」が滲み出てくる文章であるとともに、ページをめくるたびに
「香り」を感じることのできる小説です。

紛れもなく「街」文学の傑作です。


スローライフ       おすすめ度
「カラスって百年ぐらい生きるらしいで」
「うそ。妖怪やん、そんなん」
「ほんまやって。鳥って長生きやねんから」
「だからって百年はないわ」
「いやでもほんま長生きやねんって。だから賢いんちゃうん」

物語とは直接関係ないけど、作品の雰囲気を端的に現す主人公たちのやりとり。

特に何も起こらないし、何か始まるわけじゃないし、何かが変わったわけじゃないけど、なぜかこころ温まる作品。

スローライフ全開。

柴崎友香らしさ、ってゆーかこんな作風しか見たことないけど、やっぱりこーゆーユルーい小説は柴崎友香しか書けないよなーと思う。

今までの作品よりも登場人物の年齢があがっているけど、中身は変わらず、おススメです。

全編フルに大阪が舞台(心斎橋とか難波多いよ)で、これが地元神戸の話だったらなあと何度も思ってしまった。
でもやっぱり関西弁は文章でも何か良いです。