指の音楽
作者 志賀 泉
価格 1,365 円
出版社名 筑摩書房
出版年月 2004/10/25
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    第20回 太宰治賞   受賞
日々の生活は確固とした結末という結末はないまま流れていく。一種の区切りのようなものはあっても、日々を生き、考え、時に過去を思い出し・・・。その意味でこれはとてもリアルな物語だと思う。

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■読者の評価     おすすめ度平均

記憶の断片       おすすめ度
物語を読みながら、自分の記憶が蘇ってきた。私も過ごした大学時代。
主人公が子供の時、踏み切り事故で死んだ聾唖の子供の名は私と同じミドリ。又大学生になった主人公が出会うらいなは右手の人指し指の先がない。私も子供の頃、同じ指の先を事故で削いだことがある。そして、大学時代はらいなと同じ空間デザイン専攻。物語に出てくる「明かり」という課題の作品展示も覚えているし、らいなのように茶室を作成した学生もいた。不思議な符合に驚くと同時に、日々生きる中で、たくさんの人々がそれぞれ違いはあっても同じような時を過ごし、その時間を切れ切れに心に刻み、また忘れているのだろうと思った。
日々の生活は確固とした結末という結末はないまま流れていく。一種の区切りのようなものはあっても、日々を生き、考え、時に過去を思い出し・・・。その意味でこれはとてもリアルな物語だと思う。


奥は深くない       おすすめ度
 『太宰治賞』を受賞した方の本と知り、興味が沸いて読んでみたが、正直「ナンだ、この程度か」程度の感想しかない。
 いろいろな人物を登場させて、作品に奥行きを持たせようと努力しているのは分かるが、人物描写(或いは設定)が画一的。現代の若者の内面を描くのに性体験や猟奇的行動ぐらいしか用いられないとしたら、表面的で軽薄な様な気がする。


曖昧な青春ドラマ       おすすめ度
主人公の俺が実家へ戻って映像を作り上げる課題として廃線になった駅の光景を友人とともに作り上げるところから物語ははじまり、初体験の機会に遭遇しながら目的を果たせず腐れ縁が続く女友達、それに和紙で移動茶室を作るキャンペーンを成し遂げようという女学生など、多彩なキャラクターが集合して、独特の浮遊感をもって物語が進んでゆき、特別息を飲むようなスリルこそ感じないが、幼き頃想いを寄せていた少女の遺体の一部をホルマリン漬けにして持っているという友人の倒錯した想い、その要因となった主人公とその少女との関係など、色々な人間模様が存在する。しかし情熱を重ねる恋愛物語でもないし、爽やかな青春物でもない、独特な浮遊感が、最後まで読ませる吸引力になっていたみたい。よかったと思う。