蝶のゆくえ
作者 橋本 治
価格 1,680 円
出版社名 集英社
出版年月 2004/11
Amazonの詳細ページへ
    第18回 柴田錬三郎賞   受賞
橋本治が現代を見ると、こうなります。 児童虐待、注意した若者に殺された男の妻、恋愛にふりまわされる女性…「普通」のはずの人々の心の動きを淡々と追ううちに、現代の荒廃した世相が浮かび上がる。鬼才の小説集。

  この著者の他の作品を検索する

著者名をクリックすると、この著者の他の作品を検索することが出来ます。

書名か表紙写真をクリックすると、 Amazon.co.jp の詳細ページに移動できます。

商品を購入する際は、移動先の Amazon.co.jp の購入ページにて、商品価格・在庫の有無や納期をよくご確認のうえ、お手続き下さい。



■読者の評価     おすすめ度平均

喉元でグッと飲み込む感情       おすすめ度
『ふらんだーすの犬』では、普通の社会生活を送りたいと思いながらも
小さな失敗から端を発し、小さな『負』の積み重ねの連続によって
雪ダルマ式に大きくなった挙句に自分の子供を瀕死の状態にまで虐待
および育児放棄してしまう母親を巧みに描いており、形は違えど一歩
間違えれば自分も堕ちるところまで堕ちてしまうんじゃないか?という
『漫画「ナニワ金融道」に登場する債権者』のような感覚、それと同時に、
センセーショナルに報じられる動機不明の犯罪はこの様に出来上がって
いくのだろうか?と思わせる。もっと言えばホラーではない恐怖感を感じる。


2005年度、       おすすめ度
 文学の世界でわりと話題になった本だ。
 短編ですべてを語るわけにはいかないが、最初の「ふらんだーすの犬」だけでも語りたい。
 この作品は、人間の思考をトレースするのが、非常によくできている。文学的とは言いがたいけれど、こう考えて、ああ考えて、だからこう行動する、と、非常にわかりやすく綿密に教えてくれている。ふらんだーすの犬では、若くして結婚した男女が子供を死なせてしまう話だ。
 男のほうは、子持ちの女と結婚することがどういうことかわかっていない。会社をやめることがどういうことかわかっていない。思考を先に先にのばす。女も、子供を虐待しているつもりはない。でも、叩けば泣き止むのだから、それでいいと思う。子供をベランダに締め出さなければ、男がキレるので、仕方ないと思う。
 そんな一々の思考がリアルに実感できて、なんていうか、こわいな。


蝶のゆくえ       おすすめ度
作品的には良いけど、なんだか読み足りない…というか、
物足りないような気がした。
音楽に例えると、強弱がなくて一定のリズムをたんたんと刻んでいるような感じがした。
胸にドンとくるものが私には感じられなかった。


病んだ現代に       おすすめ度
6篇の小説集ですが、最初の「ふらんだーすの犬」を読んで強い衝撃を覚えました。病める現代の人々誰にでもに起こりうる内容とその残虐さ、背筋が凍りつきました。「児童虐待」、あまりに可哀想な事実ですが、どこか「大切なもの」の軸がずれていると、この物語のような最悪の結末に向かっていってしまう。それを阻止することの難しさを感じます。
その他の5篇も、人間関係をうまく結べないどこかギクシャクとした社会を象徴する内容で、今の世の中がきしきし音を立てているかのように感じました。橋本氏のメッセージは暗く、希望が見えない状態でした。
的確な表現と、深いところまで抉り出された良書といえますが、私としては、もっと救いのある内容を期待していただけに、星ひとつ減点とさせて頂きます。


ユズショー       おすすめ度
第十八回 柴田錬三郎賞の受賞が決まりました。
おめでとうございます。

今、同じ著者の「江戸にフランス革命を!」を
読み返しているのですが、本当の知識人の
持つ悲しいさが(笑)をたくまざるユーモアが
救ってくれていて、突きつけられる現実を
どう受け止めどう改革していくのか非常に
参考になりました。

この作品も、絶望的なまでの人間の愚かさや
救いようのなさ、無知、無自覚に起因する
悲しさのきわみが描写されており、
「この現代において人が生きる・よりよく
生きるとはどういうことか」を鋭利な刃物
のように突きつけられる思いがします。

それにしても本当に文章のうまい人ですね。
飾らずおごらず、そのときその場でもっとも
必要なコトバをさらりと選び、情景も心理も
作者の感じたままがまるごと伝わってきます。

これだけのあふれる思いを抱えて、人には
みえないものが見えてしまうのは大変だとは
思いますが、ここまで的確に「伝えること」
ができるプロフェッショナルとして今あることは
作者の不幸を物語るものでは決してないと
思います。

橋本さん。

天才とはあなたのことです。