残虐記
作者 桐野 夏生
価格 1,470 円
出版社名 新潮社
出版年月 2004/02/27
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    第17回 柴田錬三郎賞   受賞
失踪した作家が残した原稿。そこには、25年前の少女誘拐・監禁事件の、自分が被害者であったという驚くべき事実が記してあった。奔流のようにあふれ出した記憶。

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■読者の評価     おすすめ度平均

虚構の虚構について       おすすめ度
とある大人にある日誘拐された『私』。そこで一年あまりの月日を過ごすことになる。のちに『私』は作家となり、結婚もするが、ずっと誰にも黙っていた『そのとき』のことを小説にし、どこかへ消えてしまう。
かなり不思議な作品だ。それは、人物があらゆる側面も持つように作られているからだろう。それは決して一方からの位置づけにとどまらず、さまざまな側面をもってひとりの人物として成立している。物語そのものは、非常に、といっても差し支えないほどシンプルだ。しかし、その背後に潜むものは迂回し、絡み、そして避けながら流れていく。しかもおもしろいのがそれがフィクションだというのだ。事件に遭った『私』が、事件についてフィクションで語るのである。虚構の虚構について考えるとき、その皮をひとつこちら側にまたいだ虚構についても考えてしまう。なかなかに印象的な作品だった。


不愉快       おすすめ度
私は、自分の過去のことがあって、どんな風にこういった被害にあった人のことが描かれているか気になり、この本を手にしました。

私にとってはこの本は読むべき本ではなかったと思っています。
読んでいるうちに、精神の不調をきたし救急で病院に運ばれました。

私自身の体験では、この本に書かれているようなことはありませんでした。
毎日、生き残ることだけが精一杯でした。当然、加害者にこのような感情も持ち合わせていません。
こういったトラウマは、この本に記述されているようにすんなりと通り越せるものではありません。(怒)長年の治療を要し、人生全てを奪われます。

感性は人の個性でしょうけど、この本が面白いという人には憤りを隠せません。
☆ゼロでもいいぐらいです。


セカンドレイプ小説       おすすめ度
三島のプライバシー裁判が記憶に新しいですが、現実をモチーフにする行為は安易になされるべきではないでしょう。
こういう小説が許される日本は言論の自由がある程度保障されているのでしょうか。ぶっちゃければセカンドレイプ小説といえます。


作品から漂う臭い       おすすめ度

様々な臭いがこの作品から感じられた。
監禁前の少女の家の臭い、閉じ込められた空間の臭い、工場のそして監禁された後の臭い。

監禁される前の彼女の家から感じられるのは母親の香水の臭い、工場では人々の重くよどんだ生活臭、解放された後の彼女からはアルコール(消毒薬)の臭い、そして時の流れと共に段々と無臭になっていくのを感じた。

密室の中で無垢(であると人々が考える)な小学生と変質者、その間の関係は人々の好奇心をそそる。今の時代、売春をしている少女だって沢山いる。しかし、こういった犯罪被害者は「汚された天使」であり、人々は白いものが汚れていく場面を想像することによって一種の興奮を覚えるのかもしれない。

この作品で描かれている事件(以前あった事件を想像させるが、これは作者の産物であろう)はあまりに重苦しい。
作品の中で彼女がその後小説家として大成したというのがせめてもの救いではあるが、昨今発覚しているこのような事件の裏側に、「ふせげるけど防がなかった」「助長した」人々が多くいたという事が何より気分を重くさせる。

桐野氏の作品にしては短編でよくまとまっている、その分読みやすいが、読後はかなりきつい・・・


暗くて恐ろしい世界       おすすめ度
面白く読めた。
さすが桐野夏生!という感じの、読んでて気持ち悪くなるほどの書き方だった。
例の事件は連想されるけど、これは十分フィクションになってると思った。