落日燃ゆ
作者 城山 三郎
価格 2,520 円
出版社名 新潮社
出版年月 2002/03
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    第9回 吉川英治文学賞   受賞
戦争防止に努めながら、文官としてただ一人A級戦犯に挙げられ、裁判を通じて一切の弁解をせず従容として死を受け入れた不世出の政治家、広田弘毅の生涯を、激動の昭和史と重ねながら克明にたどる。

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■読者の評価     おすすめ度平均

広田弘毅の生涯を鮮やかに描く       おすすめ度
本書は、文官としてただ一人、東京裁判で戦争責任を問われ、処刑された広田弘毅の生涯を鮮やかに描く一冊である。

明治11年、福岡市の貧しい石屋の息子として生まれながら、一高、東大、外務省を経て、32代首相まで勤めた広田。しかし、近代日本が転落し、戦争に突入していく歴史の流れにおいて、その防波堤になることはできず、ただ一人の文官として、戦争責任を一身に負いその生涯を終える。

東京裁判に臨んで、一切自己弁護を行わない、広田のその潔い姿は、読むものに深い感銘を与える、城山文学の最高傑作のひとつである。


広田のキャラがしっくりくる人向き       おすすめ度
広田弘毅が、どうやって総理大臣にのぼりつめたかを書いた本。
彼は、上から言われたことを、真面目に淡々とこなす優等生である。彼は真面目と誠実さを上司に買われて、総理大臣にまでのぼりつめた。
しかし、出世欲がなく、政治の流れや成り行きに身を委ねるので、筆者は広田中心の話を書きにくかったのか、吉田のやんちゃぶりにも焦点が当てられている。
また、
これから官僚を目指す人や、官僚向きの性格の人にはこの本はしっくりくるかもしれない。しかし、そうでない人には、広田に感情移入するのは難しいので、手にとるのをあまりお勧めしない。


最後の武士       おすすめ度
広田弘毅が東京裁判においてA級戦犯として絞首刑を受けたことに対する疑問は現在でも大きく、裁判の公平性を考える上で、将来的にもこの東京裁判の間違いは歴史上の汚点として残っていくことと思います。しかし、当事者であった広田の気持ちは我々の考え方とは全く違ったものだったと思います。広田を一言で表すなら「武士」でしょう。「武士道とは死ぬこととみつけたり」と葉隠れに記載されているように、死ぬことを常に考えながら最後まで日本を戦争させないように尽力した。しかし日本は最悪の形で戦争をしてしまった。その時点で広田には「死」しかなかったのではないでしょうか?それも自害ではなく戦勝国の裁判に裁かれる「死」であることが広田の最後の抵抗だったのかもしれません。
広田の生き方は武士道につながっているのだと強く感じました。


現代に求められる大人の生き方       おすすめ度
 日中戦争及び太平洋戦争は、私から日本の歴史、文化を断絶しています。それは
あまりにも痛ましい記憶だからなのでしょうか。この出来事に関わった人たちが
まだ存命しており、利害が衝突して歴史として客観的な評価ができないことから
公的な教育から封印されていることが大きいのではないでしょうか。

平成から最も近い昭和史を学ぶ事は、教育されることに解放された大人だけに
許された特権になっているように思います。その意味で本作は良質な教科書の
役割を担ってくれる数少ない良書です。

 解説を読むと筆者は本書を『小説』と位置付けていますが、私は戦中を生きた
広田弘毅の生き様を辿りながら、どういった経緯で日本が悲惨な戦争に突き進んで
いったかを政府内部から語るノンフィクションとして読みました。広田の「自ら計
らわぬ」生き方は、一見消極的な印象を受けます。しかし彼は、目の前の課題に対
して自分の価値観に従い、全力で取り組む姿は実に主体的に感じました。この誠実
さは現代のローモデルとなり得るのではないでしょうか。彼に比べると外務省同期
で戦後初の首相になった吉田茂が小さく見えます。また彼は自分の家族との時間を
大切にする良き家庭人であったことも団塊世代には非常に少ない、これからの大人
の生き方を示しているように思います。

彼は戦前戦中に外相、総理大臣を歴任し東京裁判で唯一文官として極刑を受けます。
戦争を止められなかった自分の責任を受け入れ、一切の弁解をしない頑固さは大人
のダンディズムを感じます。その意味でも大人の良書足るのではないでしょうか。


知らないことが多くて       おすすめ度
近代史も知らないことが多いのですが、少し図式的すぎるかもしれないけど一通りの流れはこれでわかります。史実だから仕方ないのですが、最後までカタルシスが得られないけど、廣田弘毅という人の爽やかな潔さだけが救いか。
大正デモクラシーから太平洋戦争に突入していく日本の近代史をちゃんと俯瞰したくなりました。