ユージニア
作者 恩田 陸
価格 1,785 円
出版社名 角川書店
出版年月 2005/02/03
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    第59回 日本推理作家協会賞   受賞
あの夏、青沢家で17人が毒殺された…。ある男の遺書によって、一応の解決をみたはずの事件。町の記憶の底に埋もれた大量殺人事件が、年月を経て様々な証言により暴かれてゆく。真実を話しているのは一体誰なのか。

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■読者の評価     おすすめ度平均

多方面から見た視点       おすすめ度
 大量虐殺となった毒物混入事件を色々な視点から見ることで描いた作品。「Q&A」と同じような仕組みですが、ぼんやりとした雨に包まれた雰囲気が小説全体を包んでいて、1人の容疑者とも言える女性が雨の向こうに見え隠れします。

 ユージニア、私のユージニア。
 私はあなたと巡りあうために、
 ずっと一人で旅を続けてきた。

 殺人現場におかれた謎の詩に、ゆっくりと流れた時間。時間の流れを味わいながらゆっくりと読み進めてください。恩田陸さんらしい作品だと感じました。


文体の実験       おすすめ度
証言をあつめていくという小説のスタイルは、おそらく有吉佐和子の「悪女について」で一定の形式を整えたものといっていい。その後、この形式は宮部みゆきに引き継がれ「理由」を生むことになる。「理由」で頂点に達したこの形式は、あとはバリエーションをつけなければ既視感のあるつまらないものになってしまうだろう。そこで恩田陸の「Q&A」「ユージニア」と貫井徳郎「愚行録」が存在するわけだ。「ユージニア」は、ある大量殺人事件を追った小説(?)を書いた満喜子という女性をさらに追うという形式をとっている。もちろん、インタビュー形式なのだが、途中「三人称文体」が混じっている。ここが秀逸だ。おそらくは満喜子が書いたとおぼしい小説の一部が載せられていたり、事件を追った刑事の「過去」が三人称であるだけでなく、インタビューも一箇所だけ設問者が他の章とはちがうところがあるなど、計算し尽くされた構成になっている。もちろんこのような実験を嫌うひともいるだろうが、私としては満点をあげたい。


あの丸窓から       おすすめ度
帝銀事件を思わせる篤志家の邸宅でおきた毒殺事件。時を経て事件関係者が語り出したこととは…。
装丁がいい、構成も凝っています。
あとは世界観の統一に対する見解で評価の割れるところです。


技巧がついていかなかったかも       おすすめ度
読んでいる間はおもしろいですが、パズラーを期待していたので、残念。「人間が描けていない」という非難を一蹴するには雰囲気も構成も追いついていないというのが正直な感想です。
再読すれば、何かみつかるかもしれませんが。


悪女を語るには       おすすめ度
悪女を語るには三人称で、複数の証言者によるべしという法則があるのかもしれませんが、この小説もかかわった人々の独白形式でまとめられています。圧倒的な筆致でぐいぐい読まされるので、中断しなければいけないことのある時間にこの本を読むのは苦痛でしょう。ラストに賛否があるようですが、外した伏線がないないことでこの小説は成功だと思います。成功で精巧ね。
個人的にはモンスターはもっとモンスターであってほしいので、星は幾分辛めです。