ミステリ・オペラ―宿命城殺人事件 (ハヤカワ・ミステリワールド)
作者 山田 正紀
価格 2,415 円
出版社名 早川書房
出版年月 2001/04
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    第55回 日本推理作家協会賞   受賞
昭和13年の満州と平成元年の東京。50年の時空を隔てて、それぞれの時代で起きる奇怪な事件。本格推理の様々なガジェットを投入した壮大な構想の全体ミステリ。

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■読者の評価     おすすめ度平均

歴史を飲み込もうとするかのような大作であり労作です。が、、、       おすすめ度
本書の壮大な構想とその筆致は、昭和史をまるごと、探偵小説という装置を用いて
凝縮させようと試みる、作者の強烈な決意を感じさせます。
メタミステリーの手法を採用していますが、現代と50年前の手記を、交互または
ランダムに読まされる事によって、ヒロインがそうであるように読者もまた、時間と
空間の認識が混沌としてくるに違いありません。
実際に、手記のかなりの部分が、旧仮名遣いで書かれていますが、いつしか自然に読
み進めるようになってくるのですから不思議です。
冒頭に謎が提示され、また連続して密室殺人事件が起こり、さらに現代と50年前の
パラレルワールドが展開されるという、昭和史と同時にミステリー史までも丸ごと飲
み込もうかとするかのようなファクターを詰め込み、綿密な取材に裏付けられた史実、
あるいは虚構を能弁に語って物語を補強しています。
しかし残念ながら、本当に残念ですが、私には手放しで賞賛するのは憚られます。
なぜならば、謎は大いに深まり、いざ謎解きということになると、いたって凡庸と言
わざるを得ないのです。凡庸なトリックならばむしろない方が良いのではないかと。
読者に手掛かりが全て示されているとも言い切れません。それまでの美麗な世界観が
一転して空疎なものになってしまったかのような喪失感がありました。また、膨らむ
だけ膨らんだ期待と、作者の用意した回答との間に温度差もあったように思います。
私の文学的素養が不足しているのだと言われればその通りかもしれません。しかし、
本書に関しては、物理トリックは排した方が良いという思いは恐らく変わりません。
本格の趣向としては、乱歩でさえ書いた事がないという、探偵役と被疑者の新しい
関係は斬新なもので、また、「検閲図書館」は別のストーリーでも読んでみたいと
思わせる、秀逸な設定でした。
ラストシーンも涙が出るほど感動的なだけに、より残念な思いがつのります。


素晴らしい。ただ……       おすすめ度
 面白かった。紛れもない力作であり、傑作とすらいえると思う。時間軸を縦横に行き来し、なかでも戦時中の描写が素晴らしく、雰囲気に満ちみちて、時の経つのを忘れさせてくれる。極上だ。
 しかし……私には残念に思えてならない。この物語は、著者が拘っている『探偵小説』でなければならなかったのだろうか? むしろ、推理とか、謎解きとか、そういったものとは無縁の、純然たる物語でよかったのではないか?
 もちろん、これは無い物ねだり、というより、お門違いというべきものなのだろう。作者はそうしたアプローチのなかからこの物語を企画したのだろうし、その線に沿ってこの雰囲気も醸成されたに違いない。しかし、その雰囲気が素晴らしいせいで、けっして探偵小説ファンとはいえない私に、思わずトリックも謎解きもいらない、普通の物語でいいと思えてしまうのだ。
 この本の中には、『平行世界』というような物理学的な概念が出てくるが、謎解きがなされないうちは、すべてがロマンティックで拡がりがあったような気がする。それが最後に謎解きが繰り返されるにつけ、同じように物理学的な言葉を使うなら『波束の収縮』ともいうべき、やけに現実的な、味気のないものに感じられてしまうのである。いや、しかし、これは、この作品に限らない、推理、探偵小説に特有の現象であるから、つまりは、探偵小説のファンではないという、こちら側の問題になるのだろう。ファンは、パズルが解けるそこで解放感と愉悦を感じるのだろうか? それこそ私には謎である。
 エピローグは、とてもよかった。ロマンティックで、雰囲気があって、何か救われたような気分だった。


『虚無への供物』にも匹敵する傑作!       おすすめ度
 600頁を超す大作ですが、とにかく 面白い。エディターレビューに書かれていますが、昭和13年の満州と平成元年の東京を舞台として、各々の時代で起こる奇々怪々な殺人事件。50年の時空を往復するヒロイン…。  本格推理小説の面白さに加えてSF がかった味もプラスされて、何とも言えぬ雰囲気を漂わせています。「探偵小説でしか語れぬ真実もあるんだぜ。」という科白が何とも心憎い。概略を述べると、読む人の楽しみを奪うことにもなりかねませんので、ただ一言『絶対に面白い。是非読んでみて。』としか言えません。現在と過去との二重奏 とも言える作品ですが、何とも言えぬ 叙情を感じさせる本です。