腐蝕の構造 (ハルキ文庫)
作者 森村 誠一
価格 800 円
出版社名 角川春樹事務所
出版年月 1998/03
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    第26回 日本推理作家協会賞   受賞
北アルプス上空で、原子力科学者雨村の搭乗した旅客機が航空自衛隊機と衝突し、墜落した。全員絶望が伝えられたが、なぜか雨村の遺体だけは見つからない。彼は国際原子力科学会議で「ウラン濃縮化の新しい方法」を発表することになっていたのだが…。その裏には、政治家と企業の利益追求のための恐ろしい罠があった!国家と企業の「腐蝕の構造」を鋭く描く社会派推理の傑作長篇。

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■読者の評価     おすすめ度平均

本格推理派と社会派との融合を目指した著者渾身の意欲作!       おすすめ度
2007年に刊行された、森村氏の小説論を作家志望者を主たる対象として詳細に解説した『小説道場』(小学館)には、本格推理派から社会派への傾斜を強めた代表作として『腐食の構造』(日本推理作家協会賞受賞)が指摘されている。『高層の死角』でのトリックメーカーしての作風はむろん残しながら(殺人事件はホテルで実行される)、そこに原子力開発(濃縮ウランの開発化)をめぐる企業と国家の貪欲な駆け引きという社会問題を巧みに盛り込んだ意欲作である。著者には格別の想いがある<山>の情景描写も印象的である。ハルキ文庫版では600頁を超え(講談社文庫版は552頁)、著者が綿密な構想とそれを確実に裏付ける地道な取材とを重ねたときに生まれる文字通りの力作であり、主題が有する社会性・話題性もさることながら、そうした一連の問題群の背景にある人間ドラマも鮮やかに描かれている。森村作品には常に<人間>に対する深い洞察力と、ときにその人間が自らの意識を遥かに超越する行動をおかす危険性を内に秘めていることへの鋭い観察力が文体そのものに刻み込まれている。タイトルにある「腐食」という言葉も、一見すると、「企業と国家の癒着」というありきたりの意味かと思いきや、最終章からも分かるように、腐食の主たる構成分子はやはり「人間」であった。『腐食の構造』をなす企業や国家、それを構成する人間の思惑は複雑に絡み合い錯綜しているのである。本作品は本格(推理)派と社会派の融合作品であるが、読み終えてみると後者の色彩が強い。とはいえ、個人的には些か本書は冗長な感じが拭えない。内容的に豊かであることは認めるが、もっとコンパクトに仕上げることはできないものか。主人公の雨村や彼が握っていた濃縮ウラン開発技術の話も途切れ、次第に<愛>をめぐる人間ドラマが中心部に居座ってくる。たしかに力作であるが、正直なところ抜群の読後感を得ることはできなかった。