海のある奈良に死す (角川文庫)
作者 有栖川 有栖
価格 630 円
出版社名 角川書店
出版年月 1998/05
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■読者の評価     おすすめ度平均

ローカル色たっぷり       おすすめ度
殺されたのは、著者の作家仲間で、探偵役は著者自身、キーワードは「海のある奈良」、という作品。
軽妙な文体で綴られていて、読みやすいが、トリックは割合手が込んでいて、面白い。
作品全体に、適度に関西的ツッコミがあって、うまく物語に引き込まれる。

物語の舞台は、主に近畿だ。
私は奈良県在住であるが、近畿に土地勘があるので、分かりやすかった。
しかし、ローカル色たっぷりなので、逆に、土地勘が無い方の方が、旅情を感じるのではないかと思った。

本作品の様に、著者自身が作品の主要登場人物になる事は、長短色々な面があると思う。
殺されたのも作家、登場人物である著者も無論作家、出版関係者の登場人物も多い。

そうなると、我々読者は、フィクションである事件の部分以外は、ほとんどが著者の実像なのでは?と思ってしまう。
出版関係の裏話も盛り込まれていて面白いのだが、著者自身に対するイメージが固定してしまう。
しかし、著者も歳も重ねるし、著者自身の境遇も変化してゆくはずで、固定されたイメージと実像が解離するのでは?
などと、下世話な事も考えてしまう。

こんな具合に、作品には多彩な側面があって、物語の本質以外の部分にも、楽しみが多い。
読者を退屈させない様、色々な工夫が盛り込まれている。

気軽に付き合う事の出来る一冊だ。


あの密室トリックって!!?       おすすめ度
火村とアリスの会話のテンポは相変わらずいいです……が、
あの密室トリック、いいんでしょうか??!! ええええ!!!?って思いました…。

 アレは科学的に実証されてないんですよ。
そもそも心理学では実験数が少ない分野で、不完全な部分が多いんです。
きちんとした論文もないし。
で、実験した人自ら実験結果が正当性のあるものでないと認めています…… 

 で、思い出したんですが・・・
 「46番目の密室」で火村が血液型診断は統計学上正しいみたいなことを言ってましたが、アレも違います。
血液型診断は日本だけです。
血液型診断は日本人で一番多いA型に得なようになってるし、根拠はナイ遊びです。外国では通じません。 

 でも、この本でいいのは「人魚」を取り巻く不思議な雰囲気ですね。
密室トリックも納得いきませんが、アイディアはなかなか楽しいです。 それで星三つです。


読むのに苦労しました       おすすめ度
有栖川有栖の作品はすごく好きです。でもこの作品はちょっと読んでいて疲れました・・
注釈というか、話がそれる部分が すごく多い。
伝説に関する説明文とか、登場人物の比喩に対する説明文とか
肝心のストーリーとは関係のない(関係ないというと言い過ぎですが)部分が多すぎて
読んでいてとても疲れました。
長編作品ですが、もっと短くなったんでは?と思ってしまいます。

前に別の作家さんの作品で、編集者から作品が短すぎるから 注釈をどんどん入れて どんどん作品を伸ばすことがあるというのを 読んだことがあるのですが、
まさにそれだな と思いました。


過程を楽しむミステリ       おすすめ度
 「海のある奈良」なんて言葉を、恥ずかしながらこの作品で初めて知りました。人魚にまつわる伝説だとか、ちょっとした旅情ミステリの趣きもある本作は、火村先生のシリーズではちょっと異色な感じがしますが、いろんな情報盛りだくさんで、謎解き以外の部分でもかなり楽しめる作品になっていると思います。

 今回は長編ですが、最後まで飽きずに読めます。ラストの描き方で、ちょっと消化不良気味の読者もおられるようですが、確かに、真相が唐突に出てくる感は否めないとしても、この作品に関しては、犯人に至るその経過そのものが楽しい作品だと思うのです。

 被害者が最後に残した「海のある奈良」とはどこなのか。どんな作品を書こうとしていたのか。もう一人の犠牲者はなぜ殺されたのか。そこに、人魚の謎はどう絡んでくるのか・・・などなど、真相を追ってアリスと火村センセが奔走する姿がおもしろい。ここでようやく、コンビが完成された感じがします。

 短編もおもしろいけれど、長編も大好きです。これ以外の「国名シリーズ」もおすすめです。 


挑戦的なミステリ       おすすめ度
 1995年に双葉社から出た単行本の文庫化。
 小さなトリックがいくつも投入されている。それぞれ、ひねりが効いていて面白いのだが、全体の整合性としては不満が残る。また、中心的な謎であるはずの「海のある奈良」はどこかという謎が、最後まで解き明かされないまま終わってしまうのもどうかと思う。もうひとつ、大きな謎が残るし。
 いくつもの短篇的アイデアがまとまらないまま長編になってしまったような作品。