夜市
作者 恒川 光太郎
価格 1,260 円
出版社名 角川書店
出版年月 2005/10/26
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    第12回 日本ホラー小説大賞   受賞
大学生のいずみは、高校時代の同級生・裕司から「夜市にいかないか」と誘われた。裕司に連れられて出かけた岬の森では、妖怪たちがさまざまな品物を売る、この世ならぬ不思議な市場が開かれていた。夜市では望むものが何でも手に入る。小学生のころに夜市に迷い込んだ裕司は、自分の幼い弟と引き換えに「野球の才能」を買ったのだという。野球部のヒーローとして成長し、甲子園にも出場した裕司だが、弟を売ったことにずっと罪悪感を抱いていた。そして今夜、弟を買い戻すために夜市を訪れたというのだが―。

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■読者の評価     おすすめ度平均

透明感のある文章でよかった       おすすめ度
ホラー作品ということですが、妖怪がでてくる点がホラーというだけで、怖いわけではありません。
ただ、読んでいくとすごく透明感のある文章に引き込まれます。そして不思議な空気感をもった作品で、読んだあとにさわやかな感覚になりました。
内容についてはふれられませんが、先の展開が読めなくて、飽きることもなく一気に読み通せました。
ちなみに本書には、短編が 2 編収録されていて、「読むぞっ」と気合いを入れなくてもサラッと読めますよ。


間違いなく才能       おすすめ度
今まで見たことのない世界観を作り上げたこの筆者は間違いなく才能がある。
これからの活躍に非常に期待が持てる。
けどこの筆者の後作2つを読んでみたけど、正直『夜一』を超える出来ではなかったように思えた。なんとなくだが、あぁこの筆者はもう『夜一』を超えるものは書けないなと思った。
恐らくだが、『夜一』が筆者の処女作にて最高傑作になってしまう。
これからのことはまだわからないが、非常に才能がある故にそこの点が不幸な作家だなと思った。


情景が分かりやすい       おすすめ度
夜市、風の古道ともに発想がよく、情景が分かりやすく描かれていて読みやすかった。昔置き去りにした弟を取り戻しに再び夜市を訪れた兄の弟への想い、そして密かにそして力強く別の世界で生きていた年老いた弟、そして人攫いとの結末、最後まで目が離せなかった。風の古道は、古道にある別世界の話だが、死者を生き返られるために古道を訪れた高校生、そしてその女性から生まれたレン、レンの成長の過程など結末が楽しみだった。ただ、風の古道の結末はあっけなく終わってしまったのが残念だった。



大気がざわめき、風に悲鳴や笑い声が混じりだす       おすすめ度
豊かな叙情性、ノスタルジックな感情を喚起せずにはいられない世界/異界。ホラーというよりも、多くの戒めを孕んだ昔噺を聴いているような読中感覚。禁忌的なモノに触れる慄きや、同時に未知を拓く昂揚が充ちている。一切の余剰を廃し、丁寧に紡がれる言葉の磁力はとてつもなく高く、読み手を軽々と異界の空気へと嵌め込んでいく。独特の世界観/その構築力ともに素晴らしいの一言。ラストに至るまで、息つく間もなく流れていく。

併録の『風の古道』にしてもそれは全く同じ。部分部分で先の『夜市』ともリンクしながら、こちらもやはり心の原風景とも言うべき、郷愁を擽る独自の世界を描いている。怖いというより物悲しい、しかし全体に緩やかな昂揚感を湛えるという不思議な作風。ベタな例で申し訳ないが、宮崎アニメに通じる世界を感じた。他に類を見ないタイプの素晴らしい作品。各所での絶賛がそれを物語っている。


注:恒川氏原作のコミックに引っかからないように       おすすめ度
 恒川氏原作の作品をめぐって思いもかけない目に遭ったので、どうしようかと迷っていたが、やはり好きなものは好きなのだし、個人の読書記録としては外せないので、やはり書く。
 正直に言えば、新古書店で見かけ購入したのだが、拾い物であった。ただ、これをホラーと呼ぶかどうかはずっと疑問に思っていた。同じようなレビューが散見され、ほっとする。懐の深ーい「ファンタジーノベル大賞」か何かの方が著者にとってはよかったように思う。ハードルが高い分、大賞は無理だったかもしれないが、その後の活動の幅は広がったはず。
 「夜市」は、ごく普通に好きであり、時々読み返す程度。やはりファンタジーである「グラン・ローヴァ物語」や波津彬子氏の作品に出てくる「鬼市」の、この世ならぬものの市の、ちょっぴり怖いもの。
 私がこだわるのは、やはり「風の古道」。どういう経緯で書かれたかはわからないが、読むごとに発見のある、味わい深いいい作品だ。これが恒川氏本来の持ち味ではなかろうか。今までの氏の作品の中で、一番自由に書かれたもののような気がする。なまじ多摩地区に住んでいると、入り口を探したくなるほどに。
 ここで注意。同じ「古道」を舞台に「レン」という少年の活躍を描いたコミックが出回っている。恒川氏の名前で検索すると原作者として出てくるが、「風の古道」とは全く趣を異にする作品である。決して手を触れてはならない。万が一手にとってしまった方、頭にきても書き込みはされない方がよろしい。相手はわけのわからない子どもであるからだ。