青山娼館
作者 小池 真理子
価格 1,575 円
出版社名 角川書店
出版年月 2006/01/31
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■読者の評価     おすすめ度平均

愛の幻想に固執する著者の執念がわからない       おすすめ度
 この小説を読むと、「やっぱり女はわかんない」ってことにどうしてもなる。不合理で不条理でなんともやっかいな代物だ。それにしても、著者はそうした存在としての女を描くのが旨い。「女の友情は時として残酷だ。不幸指数が完全にかけ離れていると、どれほど親しかった相手とも、急速に疎遠になる」なんて表現は、まさに著者の本領発揮。
  しかし、この負のパワー全開の主人公、なんで娼館マダムに認められるのかがわからない。もちろん喪失感が転機を生むってところはあるかもしれないけど、これは主人公のように星のめぐりが悪い読者に向けた作者の救いの手なのだろうか。だって主人公が自覚しているように、娼婦の適性である“教養と美しさと気品”があるようには全然描かれていないもんなぁ。それを「あなたは、美貌はもちろんのこと、マダムにあなた自身の教養を感知され、認められた。だから今、ここにいる」なんて言われちゃうわけで。男でも女でもそうだけど、いい大人になってから、突然、審査され、認められ、選ばれる、なんて機会はめったにない訳でさ。こうなって来ると、不幸な人生を送ってきた女が突然認められて娼婦として再生、そしてその後のまったく違った人生、ってのを期待して読むんだけど、それは裏切られる。余計な男が登場してくるんだよ。著者は女については男の想像が及ばないくらい、おぞましく、醜悪に、救いようのないくらいリアルに描くんだけど、男についてはあまりに理想形を描きすぎだ。ここまで愛の幻想に固執する著者の執念がわからない。偽悪気取って性善説って言うか。「愛してる」とか「愛してた」なんて言葉を吐くやつは100%ダメ男である。なんか無頼っぽい風体してても、こんな科白を口にするやつは駄目チンである。男からすると、とても気持ちの悪い輩だ。最後の娼館マダムのエピソードも陳腐だし、どうにもこの世界観は理解しがたいもんがあるなぁ。


描きたいことの展開       おすすめ度
前半は、奈月と麻木子の対峙をベースとしたSEX絡みの展開でした。作者は何を言いたいのだろうと怪訝な気持ちでした。
後半は、麻木子の死と奈月の娼館の世界へ足を踏み込んだこと、これが「性」を扱おうとした作品になるような気がしていたのです。
そして、麻木子の恋人、川端との出会い。これで小池ワールドの展開となったと思いました。ここでグッと引き込まれたのです。
どのようにこの物語を結ぶのか興味津々で読み進めました。またもや、情死で終わらせるのか、それとも恋愛に発展するのか、どちらでもありませんでした。
「生きている、生きていたい、」「性と性、生と生とがぶつかり合う」という最後のフレーズが、強烈に心に残ります。
この作品で作者が問いたかったのは、複雑な状況下になったときの生への執着をどのように結実させるべきか、ということだったのではないでしょうか。


various themes       おすすめ度
ヘアメイクの仕事をしながら、一人で娘を育てていた主人公、
黒沢奈月。しかし、この二歳の愛娘が家のベランダから転落死
してしまったことにより、奈月の人生は様変わりする。

虚無、憤怒、人肌への欲求。
奈月を取り囲んだ雑多な感情と、彼女自身の素直な思いから
導かれた答えは、奈月の親友が働いている青山の高級娼館、
「マダム・アナイス」で、自分も働くということだった。

作品内には、男女間の関係以外にも、死に対する向き合い方や
愛のあり方、親友との友情など、様々なテーマが潜在している。


これは実話がもとになっている?       おすすめ度
この本を読んでみた。はじめは単に興味本位で読んでみた。
P.7の「窓のない部屋だった。ごちゃごちゃした家具や小物は一切なく,ビロウドのように見える厚手の,葡萄色の壁紙に囲まれた,装飾品の何もない,ただ,椅子とテーブルとソファーがあるだけの」

私はこのような部屋をみたことがある(料金は,この本に出てくるような法外な値段ではないですが)。

最初は興味本位だけだったのです。

でも,14章の始まりの部分を読んでいくと,胸が締め付けられるような気持ちになりました。特に,
「時折,墜落,という言葉を思い浮かべる。どうやら自分は,堕ちるということを誠実にやってのけたかもしれない,と思うことがある。
実際のところ,ここまで誠実に堕ちると気持ちよかった。ごまかしの何もない,赤剥けのひりひりした肌を見せながら,私は堕ち続けて言った。」

私は,このような人を知っている。私の知人が独白をしているような錯覚をもちました。

最後の最後で、私は救われたような気持ちになりました。

「これからも時々,来て。そしてお金を払って私を抱いて」

私の知人がこのように思って,強く生きてくれるのなら,それでよいと感じました。


青山娼館       おすすめ度
奈月と川端。野崎とマダム。つらく、切なく、すてきな関係。人生はどうやっても生きていかなくてはと思わせてくれる。川端のような男は魅力的だ。いつもながら、この作家のものは、自分の現実とかけはなれた世界へ連れていってくれて余韻が残る。