すじぼり
作者 福澤 徹三
価格 1,680 円
出版社名 角川書店
出版年月 2006/12
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    第10回 大藪春彦賞   受賞
少年の瞳にうつる、壮絶に散ったやくざの生きざま。 ひょんなことからやくざ事務所に出入りすることになった亮。時代に取り残され、次第に生きる道を失っていく昔ながらの組の最期に立ち会う少年の目を通して、一つの時代の終焉を哀切と共に綴る瑞々しい青春極道小説!

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■読者の評価     おすすめ度平均

チープな話だけど、おもしろい。       おすすめ度
この人の本は、なんだかんだいって結構読んできた。でも、本書のようなホラー要素のない本は初めてでもあり、期待と不安の入り混じった複雑な心境で読み出したのだが、これが結構読ませるのである。でも筋書きは、まんまVシネだった。リアルに怖いゴクドーさんたちが登場して、地方のなんともいえない場末的な雰囲気の中で熱い熱いシノギを削っていくのである。
しかしこれが読ませる。ほんと、このチープな話がおもしろいのだ。
まず主人公である甘ちゃん大学生の亮がホント馬鹿。でもって自分からどんどん窮地に陥ってしまう。これがある種の快感だった。オビで北上次郎が書いているのはそのことだろう。どんどんエスカレートしていって、どんどんヤバイことになっていく。ほんの出来心でした大麻の盗みが、やがて組同士の抗争に発展していってどんどん人が死んでいくのである。う〜ん、いま気づいたが、さっきから『どんどん』ばかり使ってるぞ^^。エスカレートしていく様を強調したかったのだ。とにかく本書はそういう風にラストに向けて風向きが悪くなる一方なのだ。ラスト自体はちょっと肩透かしの感が無きにしも非ずなのだが、それは目を瞑ることにしよう。登場人物に目を向けると、ゴクドーのみなさんも任侠を重んじる方々と、ハイテクを駆使した事業展開でのさばっているインテリで冷酷な方々という風に非常にわかりやすい構図で色分けされており感情がブレることなく物語に没入できたし、こういう話にありがちな濡れ場が多いというワンパターンの戦法がなかったのも良かった。
というわけで、チープな話だったのにも関わらず結構楽しんだ。やっぱりこの人好きだなぁ。


やくざと青年の交流と切ない別れ/見事な青春小説の誕生を祝福せよ       おすすめ度
■北九州市に住む滝川亮は地元の私立大学4年生で父親と二人暮らし。就職の当ても無く、卒業もきわどい有様だ。亮はかつて東京に居たが、父親が事業に失敗し中学のとき父の実家がある北九州市にきたのだった。父はタクシー運転手をし苦労して息子を大学にやったが、無目的に日々を過ごす亮との仲はよくない■ある日亮は、悪友の翔平と和也にそそのかされて、繁華街のクラブの金庫の大麻をくすねる。やくざに追われ逃げ込んだバーで、亮は速水という男に助けられる。速水は小さなやくざ組織速水総業の組長だった。ひょんな出会いから、亮は速水総業に出入りし、19歳の下っ端組員・松原にパソコンを教える羽目になる■速水総業には、ほかに武闘派の若頭・武石、風俗担当の若頭補佐・目黒、債権取立て専門の尾崎がいた。速水総業は任侠道を律儀に守ろうとする古い体質の集団だった■やがて友人の和也が自分を速水の配下だと虚勢を張って事件をおこし、それが発端で速水総業は、対立組織仁龍会との凄惨な抗争に突入してゆくことになる。世話になった速水を助けようと真剣に苦悩し、もがく亮――。物語は父と子の対立と和解を織り交ぜつつハイスピードで展開する■アウトローの世界を描きながら何故か哀感切々たるものが心の奥底から吹き上げてくる。見事な青春小説である。