秋の牢獄
作者 恒川 光太郎
価格 1,470 円
出版社名 角川書店
出版年月 2007/11
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■読者の評価     おすすめ度平均

圧倒的すぎる短編集       おすすめ度
何度も繰り返し味わいたくなる一冊
この本という牢獄に私自身、囚われてしまったからかもしれない
特に最後の幻を作り出せる少女の話が息をのむほどの完成度で、最初に読み終えたときは茫然となってしまった程でした


異次元へようこそ       おすすめ度
何気ない日常にぱっくりと口を開けて待っている異次元の入り口。
背筋がぶるんとする世界がそこには広がっている。
私たち読者は主人公とともに、その「異次元」へとっぷりとはまりこんでいっていまう。
ホラーではあるが、単なる「怖さ」だけでなく、その「世界」の空気があまりに独特で、せつなくて、読んでいる間は誰にも話しかけられたくない気分になる。
表題作の11月7日を繰り返す「秋の牢獄」。次々消えていく仲間の行方は11月8日なのか、それとも…。「北風伯爵」とは?謎は深まるばかりなのに、なにも真実は見えてこない。だからこそ「怖い」。
そうだ、明日は11月7日、もしや私も「仲間」になっていまうかも…。


閉じたものを開く       おすすめ度
恒川の3冊に共通しているのは「閉じたものを開く」、ということに尽きる

つまり、最大の難問は「どう閉じているか?」
「閉じていることの魅惑」が必要だ
予め閉じられたところにいるが、閉じられたところに迷い込むか?

このテーマの日本最高の創作者は手塚治虫である
殊に「火の鳥」は閉じられてしまった人々が、そこから逸脱する物語ばかりだ

「リプレイ」の影響は自らも認めるように本文にも現れるが、実は「火の鳥」の影響こそが
隠された大きな影である。収録3作品ともに「火の鳥」の異形編のプロットだ
(異形編の要素である閉じた時間、閉じた場所、閉じたものが異形を育むを3つのお話に
分けている、と言えるだろう)

そして、(おそらく)それをこっそり解き明かしてもらうために本文に「ムーピー一家」(火の鳥に
登場するクリーチャーの一族で想像の世界に人を閉じることができる)という言葉が記されている

前の2作に比較すると行間からはやや明るい光が見てとれる。簡単に言うとポップになった
いたずらっけも現れてきた

このまま「閉じる/開く」のプロットを追及するか、あるいは4作目で新機軸を見せるか?
どっちにせよ年1冊ペースでゆっくりと、丁寧で言葉少なな物語を書き続けていってほしい


秋という季節に読むに相応しい物語       おすすめ度
好きな作家です。
私のブログでもすでに二冊紹介しています。
この三作目に当たる本書は、とても気になっていたのですが読む順番が後回しになっていました。
どれも秋という季節に読むにふさわしい中編です。さらっと読めますね。

同じ時間を繰り返す女子大生の話、老人から不思議な藁葺きの家を譲り受けた青年の話、血の繋がりのない祖母から不思議な力を受け継いだ少女の話。
そう、主人公たちは何かしらに囚われています。
それが牢獄。甘美な牢獄か、それとも地獄の苦痛となる牢獄か!
いざ、読書の秋の始まりです。


流石の出来       おすすめ度
プロットの出来栄えとか、そういう点でこの小説郡を評価すると「彼にしては少し...」といった感じもするが、理屈抜きでこの3作品が好きである。

恒川光太郎の魅力は3つ。(1)絵画的描写の美しさ(2)不気味なリアルさを持つ“人間の醜さ”(3)ホラーでもファンタジーでもない独特の雰囲気


この作品ではこれら3つが惜しみなく発揮されていた。そもそもバランスが良い。表題作では(3)、『神家没落』では(2)、そして最後の一篇では(1)が映えていた。『神家没落』は有名なマヨイガをモチーフにした作品だが、この人にかかるとこれも怪奇モノ的怖さではなく、人間の業の深さに恐怖してしまうのが不思議だ。