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■読者の評価
おすすめ度平均
気になる作品であることだけは間違いない おすすめ度
モラトリアム下にある大学生の日常を
ただただ淡々と描いている。
堅苦しい理屈を、恐らくは意図的に
思考からも筆致からも丁寧に消すことによって
独特の雰囲気を醸し出すことに成功している。
唯一、その微温湯的な構造を破壊するのが
夢の挿話とそこに登場する少女の存在で、
ラスト、その夢の世界が現実世界を覆い、
イメージが乱舞して終わる。このラストの
処理をどう解釈すればいいのか、
正直私にはよく判らないが、
気になる作品であることだけは間違いない。
ただただ淡々と描いている。
堅苦しい理屈を、恐らくは意図的に
思考からも筆致からも丁寧に消すことによって
独特の雰囲気を醸し出すことに成功している。
唯一、その微温湯的な構造を破壊するのが
夢の挿話とそこに登場する少女の存在で、
ラスト、その夢の世界が現実世界を覆い、
イメージが乱舞して終わる。このラストの
処理をどう解釈すればいいのか、
正直私にはよく判らないが、
気になる作品であることだけは間違いない。
七五調に繋がって、消える おすすめ度
「愛でもない青春でもない旅立たない」見事な七五調。それでいて何も言っていない。このタイトルが、良い、というか、好きだ。
あるのはとりとめのない文体だけ。全然押し付けがましくなくて、といってクールすぎるわけでもなくて、適量。そこそこゆるくて、そこそこ緊密で。一応、筋はあるけど、「僕」がいつの間にか失恋しているくらいのもので。
でも、やっぱりなにもないけどなにかがあって、それはきっとタイトルの七五調みたいなものだ。
<「ロマンスカー」山本が言った。
「ロマンスカー!」僕は叫んでみた。
「ロマンス!」「ロマンス!」山本が二回叫んだ。
「ロマンス」僕も言ったが、そろそろやめるタイミングだと思ったので一回にしておく。
「ロマンス!」山本が最後に一回叫んだがそれはなんとなく失敗っぽい感じになった。>
たとえばここには七五調がある。七五調を起動させて、あとは調子に身を任せる。それを超えてしまうと、失敗っぽい感じになる。こういう文章の集まりで、この小説は出来ている。失敗っぽくならないぎりぎりのところを、意外と張りつめたところを綱渡りしている。終わるタイミングを、いつも見計らっている。たぶん、何かが始まるのを恐れるからだ。それはきっと、小説なら、「物語」と呼ばれるものだ。物語が始まる前に、文章を終わるタイミングを、この小説はいつも計っている。
そのことを「僕」は自覚している。そして、そのことにどこか焦りを感じている。<何してんだ俺は!>
全部を、自分でコントロールしているような感覚。語調と自分が繋がってしまって、自分が見えなくなってしまう感覚。気がつくと、誰もいなくて、なにもなくて、「僕」さえもいなくて、だから、この小説は、とても面白く、爆笑しながら、にやにやしながら、読者として、作者をコントロールしながら読んでいるような気になるのだけれど、そのうち読者の僕も繋がって消えてしまって、読後感は、寂しく、哀しい。
僕は、好きです。でも、哀しいです。なんとなく、このへんにしときます。
あるのはとりとめのない文体だけ。全然押し付けがましくなくて、といってクールすぎるわけでもなくて、適量。そこそこゆるくて、そこそこ緊密で。一応、筋はあるけど、「僕」がいつの間にか失恋しているくらいのもので。
でも、やっぱりなにもないけどなにかがあって、それはきっとタイトルの七五調みたいなものだ。
<「ロマンスカー」山本が言った。
「ロマンスカー!」僕は叫んでみた。
「ロマンス!」「ロマンス!」山本が二回叫んだ。
「ロマンス」僕も言ったが、そろそろやめるタイミングだと思ったので一回にしておく。
「ロマンス!」山本が最後に一回叫んだがそれはなんとなく失敗っぽい感じになった。>
たとえばここには七五調がある。七五調を起動させて、あとは調子に身を任せる。それを超えてしまうと、失敗っぽい感じになる。こういう文章の集まりで、この小説は出来ている。失敗っぽくならないぎりぎりのところを、意外と張りつめたところを綱渡りしている。終わるタイミングを、いつも見計らっている。たぶん、何かが始まるのを恐れるからだ。それはきっと、小説なら、「物語」と呼ばれるものだ。物語が始まる前に、文章を終わるタイミングを、この小説はいつも計っている。
そのことを「僕」は自覚している。そして、そのことにどこか焦りを感じている。<何してんだ俺は!>
全部を、自分でコントロールしているような感覚。語調と自分が繋がってしまって、自分が見えなくなってしまう感覚。気がつくと、誰もいなくて、なにもなくて、「僕」さえもいなくて、だから、この小説は、とても面白く、爆笑しながら、にやにやしながら、読者として、作者をコントロールしながら読んでいるような気になるのだけれど、そのうち読者の僕も繋がって消えてしまって、読後感は、寂しく、哀しい。
僕は、好きです。でも、哀しいです。なんとなく、このへんにしときます。
「現代文学」 おすすめ度
これぞ現代文学。いったい何が中心なのか、不可解に挿入される夢の挿話も、そのなかの少女もどこへやら、青くさい青春の日々はしかし鬱々と過ぎていく。
しかし、こういう青春小説は書くのが難しい。たとえば、主人公に僕は駄目なやつなんだと言わせたとしても、それは安いナルシズムと受けとめられて失敗しちゃうから。ただ、これはやよい。駄目な理由が曖昧であり、心情と背景(エピソード)をうまくあわせて、そんなに語りがうっとうしくない。それはけれど、文章のなせる業、かもしれない。
にしても、文章がよい。イメージ的には(綿矢りさ+舞城王太郎)÷2+αーβといったところ。なかなか好みの文章である。このあとの「北区の滅亡〜」がどうやら傑作らしいので、そっちも読みたい。
しかし、こういう青春小説は書くのが難しい。たとえば、主人公に僕は駄目なやつなんだと言わせたとしても、それは安いナルシズムと受けとめられて失敗しちゃうから。ただ、これはやよい。駄目な理由が曖昧であり、心情と背景(エピソード)をうまくあわせて、そんなに語りがうっとうしくない。それはけれど、文章のなせる業、かもしれない。
にしても、文章がよい。イメージ的には(綿矢りさ+舞城王太郎)÷2+αーβといったところ。なかなか好みの文章である。このあとの「北区の滅亡〜」がどうやら傑作らしいので、そっちも読みたい。
秀逸 おすすめ度
自己愛によって濁されていない、うつくしく無駄のないさらりとした文章。水の中に浸かっているような心地よさがある。テンポも良く読みやすい。平凡な大学生の日常と心境に幻想的な夢の世界が折り込まれる。重苦しい主張もテーマもない。ただただ洗練された言葉がひとつの切り取られた世界をつくる。脱力しているといえばいいだろうか。それでいて作品全体に渡ってどこか切なさを漂わせる。純粋に読んで良かったと思わせる何かがある。平凡な大学生をひとときでも経験した人なら誰しも共感できるのではないだろうか。
共感。愛でもないし旅立たないし、青春でもないかも。 おすすめ度
前田司郎さんという人は全く知らなかったけど、群像に収められていた愛でもない青春でもない旅立たないは秀逸だった。
愛でもないし青春もしてないし旅立たないんだけど、作者と同世代の若者(少し前の大学生。今も同じなのかな?)の姿をよく描けてると思う。適当にアルバイトして、友達となんとなくつるんで、その中の一人と浮気しちゃって、彼女を失ってちょっと後悔する、そんな主人公の毎日はゆらゆらしながら続いていく。
すごい共感できた。そうだ、俺らはこんなんだって。特に何もないけど、思って感じて動いて話して生きてたぞって。意味なんてなかった毎日。
でも僕らの世代にしてみたら、このゆらゆらした毎日が「青春」だったのかもしれないって思った。愛でもない旅立たないけど青春だったかも。

