とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起
作者 伊藤 比呂美
価格 1,785 円
出版社名 講談社
出版年月 2007/06
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    第15回 萩原朔太郎賞  受賞
母の苦、父の苦、夫の苦、子どもの苦、でもなによりも「私の苦」…。女であることのしんどさを、愛と毒にみちた、生きた言葉で解放する説教節。「群像」連載時より大反響、話題の“長篇詩”遂に刊行。

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■読者の評価     おすすめ度平均

すごいです。       おすすめ度
今年のナンバー1決定です。
すごいです。
今まで、両親の介護と看取りのことを考えると怖くて、怖くて、仕方がなかったのですが、この本を読み終えるとともにすこし怖さが消えました。いえ、消えたのではないんですが、何か別のものに変わりました、恐怖が。ずっとずっと後で、それが何に変わったのだったか思い返す日が来ることでしょう。そのときには私も自分自身の死について考えるようになっているのでしょう。
浄化を伴う言葉の力がここに「生きて」います。それが「生きて」いるというのは本当に、心底、すごいことです。この詩人の作品を読んできてよかったと心から思いました。


すばらしかった       おすすめ度
なんというか、こういう文学もあるのかという思い。今まで読んだことのないものです。


長編詩?随筆?私小説?       おすすめ度
麻薬のような呪文だらけの本。この人でしか味わえない快感とグロさ。たとえて言えば、この本を読むのは「巣鴨のとげ抜き地蔵を、お参りしてお札を買う」ようなこと。

>>「たまごっちがあれば」「わたしは使える、時間を楽しく、病院で待っているときも、空港でも、飛行機の中でも」「すべての日本の少女たちはみな例外なく持っている、たまごっちを」<<

こんな具合に、娘や夫の英語の直訳が、ずらずら出てくる。その硬くてこなれない日本語が、面白み。娘らは、どこかしら病んでいる。元凶は、日本人と西洋人の狭間に生きることの困難さか。つきつめれば「私は孤独だ」ということ。

末っ子に、日本語を完全にマスターさせようと、行ったり来たりして悪戦苦闘している姿は、もはや悲痛。言語をツールとして見るのではなく、言霊の宿るモノとして「頼みの綱」にしている感がある。やはり詩人ならではの感性。

呆けてきたお母さんとの会話も、面白悲しく、リフレインに満ちた、それらは「詩」のようでも(祝)詞」のようでもある。どんぶらこっこと、楽しめる派と、悪酔いする派が居るに違いない。

最近の彼女のテーマは「生・性・死」。ねずみは素手で捕まえられるのに、死骸だけは触れない、という著者は激しく「死」を恐れ、それゆえ解剖するみたいに、血糊やゲロや排泄物にまみれて「死」を探している。そして「生」も「性」もしかり。

1.なんだって人は!こんなにも苦しみながら生きているのか!?
2.滑稽にも性を営み!子をなし、繁殖し!それを育て!
3.病を得て!老いて!そして苦悩しどおしで!死んでゆかねばならないのか!?

そういうことが、連綿と書き連ねてある。育児エッセイシリーズがそうだったように、読む人は、知らず知らずに、それらの苦悩から救われる。私も、どうにかして、これらの疑問を解明したい。と、この人を読み続ける。

ラストが、突然に感動的で、泣けた。