ミノタウロス
作者 佐藤 亜紀
価格 1,785 円
出版社名 講談社
出版年月 2007/05/11
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    第29回 吉川英治文学新人賞   受賞
革命。破壊。文学。 「圧倒的筆力、などというありきたりな賛辞は当たらない。これを現代の日本人が著したという事実が、すでに事件だ」福井晴敏氏 20世紀初頭、ロシア。人にも獣にもなりきれないミノタウロスの子らが、凍える時代を疾走する。文学のルネッサンスを告げる著者渾身の大河小説。

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■読者の評価     おすすめ度平均

ちょっとは売れたのでうれしいです。       おすすめ度
昨年5月の発売後、7月に三刷、そして12月には五刷がでるという思いもよらない好調ぶりに加えて
年末から3月にかけて、「本の雑誌」1位やら「吉川新人賞」受賞等々とファンがのけぞる状況が展開。
(なにせ作品の数が少ない上に流通もしてないので内輪でフィーバー。)
ある程度売れたのは妙にわかりやすくなってるからかな、などと詰まらん疑念を抱きつつも
吉川章受賞の勢いでさらに大量増刷!?と小躍りしましたが、今年は4月に六刷が出たのみ。
やっぱり受賞は売上には関係ないのかなあ(芸術選奨新人賞の「天使」も同じ。)と寂しさを感じながら
もう一度冷静に読み直せば、平易な言葉を撚り合わせ高い内圧をもった文章に彫琢する「造形作家」
佐藤亜紀の真骨頂が存分に。
しかし、今まで以上の広い層に浸透したのは事実。他の作品のレビュー評価はみな4.5とか5なのに、
「ミノ」だけ3.5っていうのが固定ファンではない読みなれていない読者に届いてる証拠。
泣かせるエンタメが主戦場でてっとり早く筋を追いかけたい、という読者には親切度ゼロの作品なので
薦めないけど「記述の強度」とか「読むことの快楽」に震えたい方はぜひ読んで。
7年ぶりに増刷された「モンティニー」もぜひよろしく。


理屈で読むものではない       おすすめ度
 デビュー作からずっと読んできたが、初めて「私ってちゃんとわかっているのだろーか」という不安を抱かずに読了できた作品だ。ファンとしてこれほど幸せなことはない。読んだ後のそういう屁理屈を一切寄せ付けない。最初に2〜3ページ立ち読みしてみて(幸か不幸か、賞を受けたので書店に平積みされている)、文章の勢いにのれない方はさっさとおりた方がいい。行けると思った方は、そのまま勢いにまかせて最後まで読めば、それでいい。感情移入まではいかなくても、魅力に富んだ強情っ張りが山ほど出てきて、そのあたりが実に美味しい。


ヘタではないが名文とも思えない       おすすめ度
ロシアの田舎地主の馬鹿息子を主人公にしたノワールぽい文学。
会話文に「」を使わず、メリハリのある描写というよりは、
淡々とした説明がダラダラと続き、
ストーリー展開は早いんだが、
主人公が糞なこともあり、
感情移入してのめりこめないツマラン文学。
第一次大戦やロシア革命の時代が好きな人にしか受けないだろう。
広大なロシアを舞台にしてるのに、
偶然の出会いが多すぎないか?
これよりはドイツものの、
皆川博子 の『死の泉』 の方がまだまし。


ひたすらな暴力       おすすめ度
 ロシア革命期,革命の奔流とは全く無関係なところで,アナーキーな暴力に明け暮れた「ぼく」たち。やりたいだけの暴力を振るい,敵対グループなどに捕まったら強姦などの暴力を振るわれながら生きていく姿は,なんともつらく,戦争や革命の持つ「恐ろしい」側面をうまく描き出していたように思う。

 「ぼく」は,次のように思う。
《人間を人間の格好にさせておくものが何か,ぼくは時々考えることがあった。(中略)ぼくはまだ人間であるかのように扱われ,だから人間であるかのように振舞った。それをひとつずつ剥ぎ取られ,最後のひとつを自分で引き剥がした後も,ぼくは人間のふりをして立っていた。数え切れないくらいの略奪と数を数えることさえしなくなった人殺しの後も,人を殺して身ぐるみを剥ぎ,機銃と手榴弾で襲って報酬を得ることを覚えても,ぼくはまだ人間のような顔をしていることができた。》(269〜270頁)
 しかし,仲間から離れ,独りっきりになった「ぼく」は,「人間の格好をしていない」(270頁)何者かになってしまった。

 重苦しくて,嫌な話だけど,佐藤亜紀の作った壮大な(虚構の)叙事詩に浸ってみるのも,悪くないのではなかろうか。


かなり微妙・・・。       おすすめ度
モチーフ自体はは興味深いものではあった。
が、一見深く人間を抉っているように見えてその実は表層をスプーンですくった程度で終わってしまっている。ありきたりであり、特筆すべき点もない。

さらに文体の読みにくさは酷いの一言である。これは文章が上手いとか下手とかのレベルではない。作者は本当に読者の目を意識しているのであろうか。もしも難解な語を使うのが良いとでも考えているのであれば、小説家としての作者の資質を疑わざるを得ない。