ミノタウロス
作者 佐藤 亜紀
価格 1,785 円
出版社名 講談社
出版年月 2007/05/11
Amazonの詳細ページへ
    第29回 吉川英治文学新人賞   受賞
革命。破壊。文学。 「圧倒的筆力、などというありきたりな賛辞は当たらない。これを現代の日本人が著したという事実が、すでに事件だ」福井晴敏氏 20世紀初頭、ロシア。人にも獣にもなりきれないミノタウロスの子らが、凍える時代を疾走する。文学のルネッサンスを告げる著者渾身の大河小説。

  この著者の他の作品を検索する

著者名をクリックすると、この著者の他の作品を検索することが出来ます。

書名か表紙写真をクリックすると、 Amazon.co.jp の詳細ページに移動できます。

商品を購入する際は、移動先の Amazon.co.jp の購入ページにて、商品価格・在庫の有無や納期をよくご確認のうえ、お手続き下さい。



■読者の評価     おすすめ度平均

評判がよい作品だったので購入しましたが       おすすめ度
 残忍さがあるということは前提にしながらも、文学的価値がありそうで、しかも、書評家の評判も高かったため、購入した次第。題材が合いませんでした。いやな気分が残る感じだけでした。


ピカレスク浪漫       おすすめ度
ピカレスクの語源は悪漢小説。
この小説の主人公、自由奔放に生きる地主の息子ヴァシリも見事な悪漢です。
とにかく密度が濃いです。時代設定も二十世紀初頭ロシアという知る人ぞ知る非常にマニアックな選択。
裕福な地主の次男として生を受けたヴァシリは、成り上がりの父を継ぐことを夢見て農業を学ぶも生来女好きな放蕩癖あり、下宿先の叔父の家の女中や故郷の娘とたびたび関係を持っていた。
しかしそんなヴァシリの運命はロシアに迫り来る戦火に煽られ風雲急を告げる。

強盗・強姦なんでもあり。
人倫を踏み外す行為全般に一切ためらいない主人公の破滅的生き様は凄い。
殺人や悪事に手を染めても一切心を痛めず自分を貫き生きるさまはいっそ清清しい。
良心の所在が人間を定義する必須条件ならヴァシリの生き様はけだものさながら自由で獰猛で野蛮。
常識に束縛されず倫理に唾し欲望に正直に生きるヴァシリはやがて脱走兵のイタリア人少年・ウルリヒと出会い意気投合する。
このウルリヒがすっごいいいキャラしてるんですよ!
ニヒルでいながらユーモアセンスに冴えて、飢えと寒さに苛まれたみじめな逆境でも軽口を忘れない。これにフェディコというびびりの少年をくわえ、やがて三人で盗んだ馬車を駆り、略奪と殺戮とどんちゃん騒ぎをくりひろげつつロシアを縦横無尽に奔走する帰るあてなき旅が始まる。
そんなヴァシリたちのやりたい放題の暴走ぶりを「おいおいそのうち因果応報天罰がくだるぞ…」と眉をひそめ読んでいくと案の定後半で…ラストは言わぬが華ですがああ無情なかんじです。天罰というか人誅のほうでしたが。ヴァシリは自業自得だけどなあ…ウルリヒ…。
文章の密度もかなり濃い。
主人公が初めて人を射殺するシーンは比喩の秀逸さに感動しました。
嗚呼美しい、官能的…ため息。
 
佐藤賢一さんの「傭兵ピエール」や森博嗣さんの「スカイクロラ」なんかが好きな方にもおすすめです。


嫌いではない。       おすすめ度
心地よく物語世界に身を委ねることができた。一息で読み切れたといっていい。
だが、読後感は《ただ物語を消費しただけ》といった印象である。

類似の印象は、たとえばサバチニ『スカラムーシュ』などがそうだった。
ただ、サバチニが痛快なる大団円の冒険ロマンであるのに比べ、
こちらの物語はどこか露悪的で、ときに不快でしかないような展開をする。

嫌いではない。
質も、翻訳で読むサバチニなどよりはずっと上等だろう。
だが、作品の売りがみえない。
何を徹底的に研ぎ澄ました作品なのか、よく伝わらない。
少なくとも、突き抜けて訴えかけてくる強烈な要素はなかった。

ある種の読書家にとっては手堅い作品なのだろうか。
しかし、まず万人向けの浅く親切なエンターテイメントといったようなものではないし、
また、作品の先に一言では語りきれない「何か」を求めるような読者にも、
得られるものは少ないかもしれない。


追記:鴻巣友季子さんが朝日新聞に書いた書評が興味深かった。


理屈で読むものではない       おすすめ度
 デビュー作からずっと読んできたが、初めて「私ってちゃんとわかっているのだろーか」という不安を抱かずに読了できた作品だ。ファンとしてこれほど幸せなことはない。読んだ後のそういう屁理屈を一切寄せ付けない。最初に2〜3ページ立ち読みしてみて(幸か不幸か、賞を受けたので書店に平積みされている)、文章の勢いにのれない方はさっさとおりた方がいい。行けると思った方は、そのまま勢いにまかせて最後まで読めば、それでいい。感情移入まではいかなくても、魅力に富んだ強情っ張りが山ほど出てきて、そのあたりが実に美味しい。


ヘタではないが名文とも思えない       おすすめ度
ロシアの田舎地主の馬鹿息子を主人公にしたノワールぽい文学。
会話文に「」を使わず、メリハリのある描写というよりは、
淡々とした説明がダラダラと続き、
ストーリー展開は早いんだが、
主人公が糞なこともあり、
感情移入してのめりこめないツマラン文学。
第一次大戦やロシア革命の時代が好きな人にしか受けないだろう。
広大なロシアを舞台にしてるのに、
偶然の出会いが多すぎないか?
これよりはドイツものの、
皆川博子 の『死の泉』 の方がまだまし。