名作はいつもアイマイ
作者 西川 美和
価格 1,575 円
出版社名 講談社
出版年月 2008/07/01
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お見事だけど、もっと語って欲しい。       おすすめ度
映画監督西川美和。映画「ゆれる」を観た時、そのダイアローグの絶妙さ、ミステリアスながら巧緻で緊密な物語性に魅せられ、更にDVDに付随していたブックレイトに彼女が書いていた演出ノートを読んで、この人は映画監督としてだけでなく、作家としても類稀な才能を持った女性だなと確信した。
これは、彼女が古今の著名な文学者たちの作品をテキストとして、その作家と作品世界を語ったレビュー集。雑誌「KING」に連載されていたモノと言う。
俎上に上げられているのは、太宰治、志賀直哉、三島由紀夫と言った文学界の巨人から、井上ひさし、向田邦子と言った自身のフィールドと重なる劇作家までの多彩な面々。彼女が前口上を述べた後、実際その作品たちが掲載(一部は抜粋)されているのが面白い試みだし、長編小説であれ、短編、エッセイであれ、その世界を西川流に咀嚼、洞察のうえ、(時には容赦なく)解析してみせるのはさすがだが、雑誌連載の限られたスペースの中、いかんせん彼女の手による個々のレビューが4ページ程度なのが残念。巻末のエッセイ「もう夢は見ないけど」が創作現場の辛苦を吐露した読み応えあるものなだけに、"本篇"でももっと彼女に語って欲しかったと思うのが偽らざる心境だ。
とは言え、今作は、本業の合間の余興的作品。必ずや近い将来文学の世界でも注目される逸材だと思うし、映画はもちろん、彼女自身の小説も是非読んでみたいと思う。