マレー鉄道の謎 (講談社文庫)
作者 有栖川 有栖
価格 790 円
出版社名 講談社
出版年月 2005/05
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■読者の評価     おすすめ度平均

推理作家協会賞受賞作にしてはイマイチ。       おすすめ度
本書は日本推理作家協会賞受賞作で、期待して読んだが、正直イマイチであった。
短編もののトリックをずるずる引き延ばして長編にしたような作品で、作者の文章は「読ませる」文章なので冗長とは思わないし、面白くないとは言わないが、受賞作としては期待はずれである。
この作品で著者に受賞させるのなら、なんで3つの「読者への挑戦状」を差し挟んだ著者の最高傑作『双頭の悪魔』で受賞させなかったのかと、推理作家協会に文句を言いたい。
著者の作品なら他にも、アリバイ崩しと「アリバイ講義」の名編『マジックミラー』もあるし、火村シリーズに限っても『46番目の密室』や『スウェーデン館の謎』の方がずっと上出来である。

むろん、推理作家協会賞は、対象年度の作品の中で最も優れた作品に授与するものであって、著者の最上作品に授与するものでないことぐらい承知しているが、それにしても他の候補作が「不作揃い」で本書がその年度で一番マシだったというだけのことなら、いっそのこと「受賞該当作品なし」にすれば良かったのにと思う。
それは歌野晶午の『葉桜の季節に君を想うということ』を読んだときにも感じたことだし、未読だが恩田陸の『ユージニア』もあまり評判は芳しくない(だから読もうと思わない)ことを見ても、受賞レベルを低くすることは推理小説界全体の質の低下につながるということを、関係者は強く肝に銘じるべきである。


普段、推理小説を読まない僕にとっては。       おすすめ度
 文庫で500ページを越える文章量だが、内100ページは物語の前段として人物紹介や熱帯の情景描写、火村と有栖川の「悪」を巡る哲学的会話、等に充てられている。その後は殺人事件の展開を追うために、情景描写が殆ど無くなる。この割り切った構成には、取材旅行をして4年半後に書き出したという編集者泣かせの事情があるのかもしれない。もっと全体的に熱帯や高原の描写が散りばめられるには、執筆時に手持ちの素材や体感・記憶が少なかったのだろう。

 その他、気になったのは以下の点。

-1. 雄と雌、男と女を巡る哲学的会話が中盤結構なボリュームで挿入される。でも、それは結局犯人探しのオチには全く関係ない。ここで話されていることは結構面白かったし、登場人物達の人間関係にも絡められたはずなので、もっと練り込んでほしかった。逆に、オチに絡めないなら不要だったかも。

-2. 全体的に人物・心理描写が浅い。特に女性。まあ、トリックと犯人探しのストーリーを見せるための「古典的本格派」の推理小説に、そこまで内面描写を期待するのは筋違いなのかもしれないが、犯人の禍々しさは書けてた気がするので、残念。

-3. ジム・トンプソン失踪事件に絡めたかったのだと思うが、なぜ最後に犯人が失踪できる状況を火村が許したのかが、良く分からない。

 以上、「推理小説に文学を求めるなよ」とファンに怒られそうなイチャモンだとは僕も思う。文句ばっかり書きましたが、作者の古典派王道「本格派推理小説」への愛は十分伝わりました。


有栖川受賞作       おすすめ度
国名シリーズで最も評価の高い作品。

マレー半島のリゾートで起こる、密室&連続殺人。

トリックは、よく練られているもので、感心してしまった。
本格ものが好きな人には、お薦め。

ただ個人的に江上シリーズの方が、登場人物のやり取りなど面白くて好きなので、マイナス星一つ。


聞き取れない!       おすすめ度
 2002年のノベルズの文庫化。
 国名シリーズは苦しい作品が多い。本書も、「これがマレー鉄道かよ!」と突っ込みたくなる部分が。
 まあ、文章は安定しているし、トリックも捨てたものではない。ファンの人には安心して読める一冊だろう。
 今回はマレーシアが舞台ということで、関係者との会話も英語が中心になる。しかし、(登場人物の方の)有栖川氏は英語が得手でない。そのため会話中に「××××(聞き取り不能)」というのがしばしば出てくる。斬新な手法だった。こういうトリックもありなのか!


密室を       おすすめ度
扱ったものだということで読んだが、面白かった、というのが率直な感想だ。
有栖川と火村のヘンテコな会話で笑わせてくれたら、次はトレーラーのなかで起こる目張り密室殺人。それから連鎖する事件―。
本家エラリー・クイーンにも劣らない、しかしながら有栖らしい本格推理ともいえる。

今まで短編がほとんどであった有栖版「国名シリーズ」だったが、580ページ長編という大作なので、いままで短い推理ものに満足できなかった読者でも楽しめると思う。
火村と有栖川が論理的推理を組み立て、火村が最後でドーンと某セールスマンのように真相を明かす。
ジョン・ディクスン・カー×エラリー・クイーン×アガサ・クリスティ×有栖川有栖÷X=「マレー鉄道の謎」になる、と著者はあとがきで言っているが、自分はX=4である、思える。