銀行総務特命 (講談社文庫)
作者 池井戸 潤
価格 680 円
出版社名 講談社
出版年月 2005/08/12
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■読者の評価     おすすめ度平均

銀行を舞台とした短編集       おすすめ度
銀行の総務部で不祥事担当の特命を受けている指宿修平を
主人公とした一話完結の短編集。主人公である指宿修平の
年齢や外見などの描写が一切無いのでイメージが掴みづら
かった。

短編なのであっさりと終わってしまう印象が残った。
ただ、一作ごとに上手くなっているというか、作者が短編に
慣れていった様な気がする。銀行という、一般企業より高い
規範を要求される組織での人間模様が描かれる。

気に入った作品をいくつか紹介してみます。
『官能銀行』
いまどき官能小説でもお目にかかれないようなベタなタイトル
なので逆に期待してしまった。でもやや期待はずれかな。
作者には銀行ビジネスなけでなく、男女の機微や色恋なども、
もう少し勉強して欲しい。

『特命対特命』
どこの企業にも派閥やセクト意識みたいなものがあるもので、
似たような仕事をしている部門ほど仲が悪かったりします。
総務部に対抗して人事部でも特命部門を創設します。
巨額損失の捜査をめぐって激しく対立する中、はたして
リミットの役員会までに真相は掴めるのか。
スリリングな展開を見せます。


連作金融ミステリー       おすすめ度
 銀行の危機管理担当を主人公とした連作短編集。全部で8篇からなるが、良かったのは「灰の数だけ」と「ペイオフの罠」の2編。
 「灰の数だけ」は品川支店長の妻子が何者かに誘拐される事件。警察に協力する形で、特命の指宿と唐木も捜査に加わる。燃えカスの数字と社名の一部から、当該企業を推理する場面は金融ミステリーの面目躍如といったところ。更に良かったのが、現金受け渡しから人質救出までの緊迫感溢れる筆致。終始緊張みなぎる秀作。
 「ペイオフの罠」では唯一女性調査役の唐木が主人公の作品。業務外で嘗ての顧客から相談を受ける形で係わるのだが、全く事件性が感じられない。しかし終盤に、隠された犯罪が明らかになるという仕掛けで、ミステリーの形式として意外性があり、面白味がある。


ダイナミックな銀行エンタテインメント       おすすめ度
大手都銀帝都銀行総務部で不祥事調査を担当する指宿修平を主人公とする連作短編。今回から人事部から配転した唐木玲がパートナーとして加わり、最後の1篇では彼女が単独主人公をつとめる。
最初の2,3編が少しあっけない感じだが、尻上がりに調子をあげ、後半はこの作者らしい銀行内部のリアリティと豊かな娯楽色の調和でグングン読ませる。銀行ミステリ、というよりは銀行エンタテインメント、いっそ銀行アクションと呼びたいぐらいのダイナミックさだ。ただ、さすがにテーマはダークで重い。この1冊でいったい何人の銀行員が犯罪者・悪人として描かれただろうか。


意外と良かった?       おすすめ度
一話完結形式。短編集はあまり好きでは無かったが、本作は主人公指宿を始めとする登場人物に妙なリアリティ(実際に特命専任などいるとは思えないが・・・)があって意外に楽しめた。
「銀行」という職場の焦燥感を痛いほど感じ、読み終わって若干のむなしさも感じたが、金融職場の現状を描き出している面は確かかもしれない。
都銀出身の作者に、経験と金融職場の知識を生かしたミステリアスな作品を今後も期待する。