マノンの肉体 (講談社文庫 つ 27-2) (講談社文庫)
作者 辻原 登
価格 600 円
出版社名 講談社
出版年月 2008/05/15
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■読者の評価     おすすめ度平均

多層的な小説世界       おすすめ度
片瀬江ノ島、マノンの肉体、戸外の紫、この三編が収められている。
「マノンの肉体」が全体の半分を占めていて、他の二編は短い。

辻原の作品は初めて読んだ。
非常に純文学っぽいのですが、読み進んでいくとちがうんですよね〜
微妙に純文学の世界から逸脱している。
いや、逸脱しているのではないな、薄く薄く広がって純文学の外へそっとはみ出ている。
この感触は体験したことがなかったから最初は戸惑って、「片瀬江ノ島」を途中で切り上げて「マノンの肉体」にとりかかり、
ああやっぱりこんな作風だと納得してから「片瀬江ノ島」に戻るという、ややこしい読みかたをしました。

ひとつの作品にテーマがいくつも織り込まれているのが特徴か。
マノンの肉体にしても・・・
語り手は膠原病の初老男で療養中、妻は離婚を考えているらしい。
入院中の男に、長女が読み聞かせるマノン・レスコー。 男はマノンレスコーの物語の中に具体的な肉体描写がないことを知る。
出身地の和歌山で昔、男同士の無理心中があったのを思い出して真相を知ろうとする。
・・・と、盛りだくさんなのだ。

そのせいだろうか、物語はどれも唐突に終わってしまう(ように思える)。
作者は何を言いたかったのかよくわからない。
わたしだけが(読解力がなくて)理解できないのかと思ったが、他にもそういう人がいるようなので安心した。

日野啓三は、「現実と意識を重層的に捉えて、多層的な小説世界を作り出してゆく想像力の粘り強さは、
衰弱しがちな純文学に新しい力を与えるものと歓迎したい」と辻原の芥川賞選評に書いているが、まさにその通り。