病院で死なないという選択―在宅・ホスピスを選んだ家族たち (集英社新書)
作者 中山 あゆみ
価格 693 円
出版社名 集英社
出版年月 2005/07
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■読者の評価     おすすめ度平均

在宅にそれほどこだわらなくてもいいのでは?       おすすめ度
在宅やホスピスでガンでなくなった人の話が、10話まとめられている本。

私の父も、最後は病院で死んだけど、死の直前には在宅にいた。
中心静脈栄養を行ないながら、
ストーマ(人工肛門)も付いていて、
寝返りをさせてくれるマットと、
モーターでリクライニングするベットなどを使いながら、
母が看ていた。
往診してくれる地域のお医者さんとか、訪問看護の看護師の人にも大変お世話になった。

しかし、この本の話に出てくるような感動的な場面はそんなになかった気がする。
在宅にいれたから父が幸せだった、かどうかは、私にはわからない。

ただ、
父には、一生懸命看病してくれる母と、
交代でお見舞いに来る、息子や娘、その子供(父にとっては孫)、などがいて、
それは間違いなく幸せだっただろうと思う。
しかしそれは、在宅にいようが病院にいようが変わらないことだから、
在宅で死ねたら一概に幸せ、と言えるわけではないだろうと思う。

この本に出てくる人たちの死にとっても、在宅やホスピス、という要素以上に、
死ぬときまで大切な人に囲まれている、という要素のほうが重要なのではないだろうか。

だから、在宅で死ぬのがよい、と当然のように決めてしまう必要は無いだろうと思う。
そうしないと、病院で死んだからダメ、みたいに、遺族にいらぬ負い目を負わせてしまう事になるのではないかな。

場所はどこであれ、その人の死を心から悼む人に囲まれて死ぬことは、死に様としては理想なのではないだろうか。


「病院で死なない」と選択することから全てが始まるとは、、、なんという皮肉       おすすめ度
涙なしでは読むことができませんでした。
しかし、この本の価値は「感情を揺さぶる内容」にあるのではありません。
末期がんに侵されたと知った瞬間から、患者とその家族にとっては、残された時間が有限だと認識せざるを得ません。だれもが闘病の苦しみ、まじかな死、不安と恐れに埋め尽くされる自分の姿を思い浮かべることでしょう。そんな立場になったら、どうしたら良いのか。
この本は、10人のがん患者とその家族へのインタビューを通じて、その有限で不安な時間を「意味ある凝縮した生」に変える勇気を与えてくれます。がんの種類、患者の事情、家族のかかわりは様々に異なっていても、意味のある凝縮した時間を患者と家族が全うするための演出には共通するものがあるという強いメッセージが全編こめられています。
その第一歩は「病院で死なない」と選択することです。ああ、なんと皮肉なことでしょう。現代の光り輝く最先端医療も、がん患者の最後の時にあってはその光を失うとは、、、。涙などなんのその、誰に見られてもかまうものか。読み進むにつれて、在宅で過ごすという選択をする勇気が生まれます。
在宅で療養するには、社会的なインフラ、利用できる福祉制度、受けられる医療サポートの内容などを具体的に知らなければなりません。本の最後の章には参考になる情報が多数書かれています。
医師が患者や家族の何所に注目したらよいのか、「診断と治療」の最新知識だけに目が行っている医学生、医師にも是非読んでもらいたい本のひとつです。


遺していく家族への想いに涙       おすすめ度
7歳の長男を遺して母親が死ななければならない。がんとは何と残酷な病気であろうか。
けれども40歳の母親は、毎日を嘆いて過ごす代わりに、長男に手紙を綴り始めた。小学校卒業、中学校卒業、高校卒業…。長男の成長の節目節目に手渡してもらうために、心を込めて、将来の長男に向かって、言葉を書き記したのだ。
本の取材当時、長男は高校を中退し、将来の道を探しあぐねていた。そこへ母親からの手紙が手渡された。そこから長男が変わった。大検を取り、みごとに大学合格。母の手紙が、彼に生きる力を与えたのだ。
この本には、末期がんの患者と家族が必死に生きた姿が、たくさん収められている。心を動かされ、涙なくしては読めない話もたくさんあった。


逝き方に凝縮された生き様から「死」を考えるきっかけに       おすすめ度
遺族へのインタビューから事実を淡々と重ねていく筆致で、読者の感情に押し付けるところがない。にもかかわらず、10人のケースそれぞれに逝く人の無念、それを乗り越えたところの残る人への思い、見取る人々の思いやり、苦悩に心を締め付けられました。幼い子を残す母は、成長する息子の将来の節目節目に贈る言葉を友人に託してこの世を去ります。思春期に進路を見失いかけた息子が、突然受け取った亡き母からの優しい言葉に溢れた手紙を読み、自分の生き様を見つめ直します。故人は心の中に生きると言われますが、最後の瞬間を医療の手から家族、友人が引き継いだからこそ、その面影が残される者たちにより深く刻み込まれるのだなと感じました。誰もがいつかは直面し、いずれは自らもその時をむかえなければならない「死」について、送りかたと逝きかたを考えるきっかけになりました。また、観念的に「在宅」を捉えるだけでなく、具体的にそれを実践するために必要な情報が書き添えられているのも、大変参考になりました。


その人らしい最後を迎える一つの考え方       おすすめ度
家族、あるいは自分が末期がんだとわかった場合、病院で最期を迎えることになる、と思うのが普通だ。
けれども本書では、最後まで家族とともに自宅で過ごすことの意義を主張し、それは多くの人にとって可能なのだという。その意義は、例えば末期がんの父親が小さな子どもをしかるとき、彼は衰弱した病人としてではなく、威厳ある父親として存在できることであるし、例えば自宅のベッドで寝ている母親の横で、子どもが宿題をするとき、子どもは母親から多くのことを教わっている、というのだ。
本書の中心は、末期がんを煩った患者10人と、最後まで自宅(ホスピスも)で一緒に戦った家族・友人の姿である。自宅だからこそ、その人らしい最後を迎えることができた。それが実感として伝わってくる。
ここ数年で、在宅介護をめぐる事情は急速に進展してきている。訪問看護師の制度、介護保険のようなシステムも整いつつある。それでも、在宅介護は楽なことではないだろう。けれども、あとがきで著者が、家族へのインタビューの最後には一種の清々しさすら感じられたと述べていることに、この問題の何かが感じられるように思えた。