逝年―Call boy〈2〉
作者 石田 衣良
価格 1,470 円
出版社名 集英社
出版年月 2008/03
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■読者の評価     おすすめ度平均

決着!       おすすめ度
数年前に発表された「娼年」の続編。これだけ年月を経て続きが描かれるのも珍しいのでは?
石田氏はその間、何冊もの新作を上梓しているわけだし。

本作では「娼夫」としての才能を見抜き、その世界に導いてくれた御堂静香の「死」に至るまでの物語が、主人公リョウの成長とともに描かれる。

「娼夫」とは巷で言う「ホスト」とは全く違う。あくまでも女性の欲望に性を交えた形で答える職業。その世界では一流となったリョウが命の焔を閉じようとする静香の性に、全身全霊をこめて答えようとする。

静香の登場は3分の2を過ぎたあたりから。前作を読んでいる読者にとっては核心がなかなか現れず、もどかしい。そしてあまりにあっけなく訪れる静香の「死」。
性に関する欲望だけでなく、もっと彼女の内面の葛藤やあがきを知りたかった。薄っぺらい作品と言う感が否めない。
「娼年」を未読の読者にとってはもっとがっかりしたのではなかろうか?


美しい性と死の物語       おすすめ度
「娼年」が最初から最後まで楽しんで読めるとすれば、この「逝年」は全体的に悲しい雰囲気が漂うが、全体を通して透明感のある文体と、全ての女性を温かく受け入れるリョウに癒される部分は健在。
「娼年」と同様、あっという間に読んでしまうストーリーの面白さだった。
しかし、「娼年」を読んでからの方が楽しめると思う部分が多く、いきなり「逝年」を読むよりは「娼年」を先に読む方が良いと思った。

ナンバーワンコールボーイのリョウは、前作と比べものにならないほどプロの娼夫として成長し、仲間とともに立派にクラブを再建していく。
クラブには新しいメンバーが加わり、経営も軌道に乗ったと思われる頃、オーナーの御堂静香が医療刑務所から帰ってくるが、彼女の体調は悪化していた・・
御堂静香が日に日に弱って死に近づいていくあたりは、とてもリアルな表現のため、病気で亡くなった近親者を思い出しかなり辛い気分になった。
リョウと御堂静香が、彼女の死を目前として結ばれるところも感動的だった。
彼女は死後もリョウの心の中に生き続け、リョウは娼夫としてさらなる成長を遂げる・・ラストのあたりは胸にしみた。

このシリーズはこれで完結編のようで残念。
もっと成長したリョウと、この後のクラブ・パッションの話が読みたい気分になった。



「娼年」を超える作品ではない       おすすめ度
全ての意味で前作の「娼年」を超える作品ではなかった。
なんだかストーリーが読めてしまう。
著者が石田衣良さんなので辛口の評価にしました。


試行段階       おすすめ度
「娼年」の続編ですが、趣はまるで違います。
リョウの成長編として期待した向きにはいささか期待外れの一冊です。
作者もデビュー時期の清廉さから進んで難解なメッセージを発信しようと試みているのが
文章の端々にうかがえます。

それはたぶんセックスを媒体としたモノなのでしょうが、この作品はまだ試験段階の域をでていない気がします。
そのためか説明臭さが鼻につきます。
やっていることはまぎれもなく売春なのですから、女性の内面を探るとか
果てはいっぱしのセラピストのような台詞がリョウの口からしばしば語られるのは
いささか興ざめです。
その手の感情は登場人物からまことしやかに語られるものではなく
あくまで読み手が感じるものであると思うからです。

あと手の込んだロケや高価な小物をつかっている割には
すべてのセックス・シーンがあまりにエロッチックでなさすぎます。
リョウが前作ほど魅力的とは思えない。
テクニックと引き換えに手垢がついちゃったのか.....

とくにオーナーとの『最期のセックス』に至っては
状況を差し引いても人体実験をみているような禍々しさに
おもわず飛ばし読みしてしまいました。
「娼年」では母の前での娘(咲良)とのセックスが今回逆になっていて
それもなんだかなぁという感じです。

「娼年」でリョウがエレベーターで客の老女の手を握るシーンがとても好きで感じた私としては、
このセンスのよい作家がいつか「娼年」を上回る上質なエロスを描いてくれることを期待しています。


既存イメージを維持しつつも・・       おすすめ度
I.W.G.Pで一躍名を馳せた著者としては、
こういう性描写の激しい、しかもアブノーマルな物語を取り上げるのはひとつのチャレンジであろう。

主人公はコールボーイとして活躍をする「青年」であり、
その周辺には歪んだ性を持つ者たちが集う。

青年を買う女性たちの気持ち。
様々な対人関係から、一人一人の人間たちを描き出す。

ヘタな青春小説よりも、痛切に人間が感じられる一冊だ。