杳子・妻隠(つまごみ) (新潮文庫)
作者 古井 由吉
価格 460 円
出版社名 新潮社
出版年月 1979/12
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    第64回 芥川賞   受賞
 戦後第一世代の作家として著名な古井由吉の出世作。この世代の中では彼が最も「内向の世代」にぴったりな作品をつくりあげているが、特に「杳子」は神経を病んだ女子大生とそれゆえに彼女に惹かれてゆくという主人公の関係を描いた作品なので、余計にその感が強い。しかし、ひとむかし前の作品との違いは、「心理主義」では書かれていないことだ。むしろふたりのやり取りや外的な状況の描写を通じてふたりの心理を浮かび上がらせているという手法が新鮮な印象を与えている。結末が予定調和的にならないのも、このふたりの関係と著者の視点から言っても、ある程度予想のつくことだと思われる。

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■読者の評価     おすすめ度平均

「内向の世代」の真打ち       おすすめ度
 戦後第一世代の作家として著名な古井由吉の出世作。この世代の中では彼が最も「内向の世代」にぴったりな作品をつくりあげているが、特に「杳子」は神経を病んだ女子大生とそれゆえに彼女に惹かれてゆくという主人公の関係を描いた作品なので、余計にその感が強い。しかし、ひとむかし前の作品との違いは、「心理主義」では書かれていないことだ。むしろふたりのやり取りや外的な状況の描写を通じてふたりの心理を浮かび上がらせているという手法が新鮮な印象を与えている。結末が予定調和的にならないのも、このふたりの関係と著者の視点から言っても、ある程度予想のつくことだと思われる。


不安       おすすめ度
読んでいる途中で自分の顔が強張っていくのを感じた。
ヒステリーとはまた違うものを抱えている女。
ページを繰るたびに私自身が不安にかられる。
流石は30年前の芥川賞。
ヒスでも狂気でもない女を描くことによって読者を狂わせる。


此岸から彼岸を眺める       おすすめ度
二つとも、著者の原点となるような作品。
不可解な女、それを観察しながら追い詰める、もしくは逃げられる男。
彼の足場は此岸にあり、確固としているようだが、女という不可思議に出会うと足場が砂にさらわれるように崩れていく。
しかし、それも一時の夢で、理解できた、という瞬間を掴んだときには、彼女は理解不能の彼岸(狂気)へと移行している。

もしくは、彼が彼女を意識的に彼岸に追いやる事で、普段の生活に戻っていく、そんなパターンが垣間見える2作品。



感情をぐらぐら揺さぶる力。       おすすめ度
収録されている2作ともレベルの高い小説です。とくに『杳子』は作者の特徴を非常によく表しており、登場人物の精神状態の不安定さが、より深く読者をストーリーに引き込みます。読者の感情をぐらぐら揺さぶる力をもった小説だと思います。