作者 梅原 猛
価格 620 円
出版社名 新潮社
出版年月 1983/02
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■読者の評価     おすすめ度平均

独創的な歴史観から見た人麻呂論       おすすめ度
作者は哲学者として名を成していながら、歴史の謎に次々と挑戦する変り種。「怨霊史観」の提唱者として知られる。その作者が柿本人麻呂の謎に挑む胸躍る作。まず斉藤茂吉が比定した人麻呂の死地に異論を唱える。これ自身は、茂吉の論自体が客観性に欠けるものであるので、あまり興味を引かない。作者の説も場所に関してはどっちもどっちだ。

問題は、人麻呂の官位とそれに絡む死に方である。紀貫之が書いた古今集の序文に、「人麻呂は従三位」と書いてあるのに、正史である日本書紀には人麻呂の名が出てこない(任官の時とか)。また、そんなに公的に低い扱いを受けていたにも関らず、人麻呂は古今随一の歌人として後世に伝えられ、人麻呂を祭る神社があったりもする(安産の神様として祭られたりもする)。何故か。これを作者独特の発想で解き明かしていく過程が魅力的である。そして、この発想が「怨霊史観」と呼ばれる歴史観に繋がるのである。歴史&ミステリ好きな方に好適な書。


推理小説       おすすめ度
 この本を読んでいて感動したのは 斎藤茂吉への批判である。というか 斎藤茂吉の独裁者ぶりが 痛快に描かれている。梅原猛自身は 茂吉を痛烈に批判していると思うのだが 痛烈と痛快の相似に自分自身笑ってしまうほどである。また ある意味で 梅原猛と斎藤茂吉は似ている と言い切ってしまってもよいのではないかと思う。それほど お二人は確信犯である。

 ということで 本書は実に面白い。柿本人麻呂を主人公とした上質の推理小説であると断言しても良い。その推理たるや実に巧妙で おそらく梅原猛の推論は正しいのではないかとさえ思わされてしまう。というか 今でも正しいと思っている。人間上手に騙されるのも 一種の才能ではないだろうか。

 

 

 



なんだかなぁ       おすすめ度
おもしろい歴史推理という意見もあるでしょうが、
論文として書かれたことを考えると、最低と言わざるを得ないと思います。
その理由として、先ず、柿本人麻呂の挽歌を含む3首の歌の解釈が挙げられます。その中でも、人麻呂の妻が詠んだ歌の解釈は、偏見と言わざるを得ないと思います。女性は夫が死んだら確実に遺体にすがりついてよよと泣くとは限りません。又、海の底に沈まずとも、川の上流の山から突き落とされて殺されたために死体が見つからないこともあり得ます。また、その歌の注は山から落とされたと解釈せよと述べています。それを無視して論を進めるのはおかしいと思います。
次に、斎藤茂吉の論文に対する態度が挙げられます。確かに本書を読んでいると斎藤茂吉の論及びその当時の文壇に対する態度はおかしいと思われます。でも、そう言っている梅原氏自身が同様の態度を取っているという指摘もあります。
以上の点から本書は論文の形式で書かれていながら、論文としては最低であると結論づけられると思います。


こんな面白い本は無い       おすすめ度
井沢元彦の「逆説の日本史」が好きな私がその本の中にも紹介されていたこの「水底の歌」を買って読んだのはその頃読みたい本が無かったからですが、読み始めてすぐにハマりました。
歴史推理(小説ではないが)の最高傑作だと思います。