深追い (新潮文庫)
作者 横山 秀夫
価格 580 円
出版社名 新潮社
出版年月 2007/04
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■読者の評価     おすすめ度平均

警察という組織で生きる男たちの物語       おすすめ度
男くさい男、を描かせたら右に出る者はいないのではないか。
かっこいい男ではない。
むしろ日常の中で誰もがもがく感情を抑え切れないかっこ悪い男たち。
だからこそ男くさい男がくっきりと存在する。

一番良かったのは「訳あり」
不器用にしか生きられない男は、自己保身に走りかけるが、
やはり自分以外の誰かを見捨てることはできない。
自分以外の誰かの、のために生きる切なさに男らしさの真髄を感じた。

警察というある種、息苦しい組織の中で己と向き合いながら生きる男たちの姿に
せつなく、感情を揺さぶられました。
遠く忘れそうになった感覚、胸の奥をきゅっと掴まれるような作品集でした。


絶賛に値する警察短編集       おすすめ度
警察を舞台とした、この緻密な短編集は、本当にしみじみと心に染みる。
表題作「深追い」も味わい深いが、それ以外の作品にも、大きく心が動かされる。

物語には、意地、どうしようもない衝動、あきらめ、ほのかな恋愛感情などが盛り込まれ、
それが、緻密なプロットのもと、ダイナミックな展開が、短編に凝集されている。

警察官が、警察組織に対して、斜めに構えているところに、味がある。
そして、物語は、警察官個人の内面の中で展開してゆく。

それぞれの物語の余韻は、殊の外長い。
絶賛に値する一冊だ。


心理描写が絶妙!       おすすめ度
7話から成る短編集。

警察の内部で、恐らく日常的に起こるであろう出来事を、
心理描写たっぷりに描いている。

第三者的に見ると大きな事件ではなくても、
当人にとっては、人生を揺るがす大事件だったりするのだと
改めて感じさせられた。

表題作は、主人を事故で亡くした後も、主人のポケベルに
メッセージを送りつづける妻の、心の闇を描いていると思った。
他の人から見れば、馬鹿げて見えるようなこと、それが
当事者には恐ろしく現実的なことだったり、巨大な恐怖へ化けていたり。

横山さんの小説は、人間の深層心理まで見えてくるからすごい!


一つの生活場としての警察署で       おすすめ度
横山秀夫は正直、長編よりも短編、と言うか、本作品のように、何らか一つの共通の場、例えば本作では
三ツ鐘署、を舞台にした連作のような形式に、最もその真骨頂が現われるのではないだろうか。
いち警察署にも、交通係、鑑識係、少年係、あるいは会計課や次長等、様々な部所で様々な警察官、事務
官が働いている。当然同じ警察署内のことだから話は発散せず、別の話から、前の、後の話の舞台も見え
隠れする。
だから、それぞれの話は短い短編で、もちろん完結した物語だけど、一方で全体として言わば三ツ鐘警察
署物語とでも言うような構成の物語とも言えるものになっている。
とても重層的で、しかも個々は秀作の短編で構成されているので非常に読みやすくなっていて興味深い。

なお、甘いと言われるかも知れないけど、本作では、どの話も読後どこかホッとする、救われた気分にな
るところが嬉しかった。


”巧い”       おすすめ度
 どんな人にも葛藤や悩みがある。
例えば、電車内で無邪気にはしゃぐ子供にも、人には想像できない葛藤や悩みがあると思う。そんな誰にでもある葛藤や悩みを描かせたら巧いのが、昔で言えば山本周五郎や松本清張ではないかと思うが、同時代で真っ先に思い浮かぶのは、本著「深追い」の横山秀夫ではないかと思う。
 
本著「深追い」では、地方都市のその又はずれにある”三ツ鐘署”を舞台にした連作短編小説集である。惚れ惚れするぐらいに7つの短編すべてが葛藤や悩みを”巧く”描いている。

 山本周五郎・松本清張の後を継ぐのは、やっぱり、横山秀夫なんだろう(そういえば、松本清張賞を受賞している)。