蝦夷地別件〈上〉 (新潮文庫)
作者 船戸 与一
価格 740 円
出版社名 新潮社
出版年月 1998/06
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■読者の評価     おすすめ度平均

蒼炎の如き文体…そしてあまりに救いようのない結末。これぞ船戸!!       おすすめ度
一ページ目からページをめくる手が止まらす、寝食を忘れ一気に読んでしまった唯一の本であり、僕の船戸作品の入り口となった本です。
とにかく、面白いっ!この一言に尽きます。どんどん自分の頭と胸に入り込んでくる登場人物たちのそれぞれの思いに一瞬でも気を抜くと熱気に燃やされてしまいそうです。
アイヌに鉄砲を運び込むために暗躍するポーランド貴族マホウスキー。
アイヌの存続を第一に考え行動するアイヌの英雄ツキノエ。
蝦夷地で暗躍する侍、葛西政信。その狙いはっ?
アイヌのために養成所を開こうとする和人の僧、洗元
職務の為ならどこまでも冷酷になる男、松前藩番頭新井田孫三郎
そして、それら全てを見届けようとする僧、静澄。
様々な思惑が絡み合う蝦夷地で、
アイヌの少年ハルナフリはその結末に何をみたのか?
物語はどんどんと最低の結末へと加速していきます。
しかし、これこそが船戸の真骨頂っ!
ここまでハッピーエンドという言葉が似合わない小説家は
日本ではこの人だけでしょう。
ほかの船戸作品は主に海外を舞台にしていますが、これは江戸時代中期の日本。
勢いでぐいぐいひっぱっていく作品が多いのにこれだけはラストまで飽きさせません。蝦夷地別件、オススメですっ!


前半は100点しかし最後は30点・・・       おすすめ度
さすがに船戸与一、最初から中盤まではあまりの面白さに止まりません。
かなりの長編ですが、キャラクターメイクと構成の素晴らしには脱帽です。最高です!
しかし、どうしてこの人はいつもラストが現実離れするのでしょうか、わかりません。
もったいないの一言です。滅茶苦茶にしてます。それがこの作者の限界でしょうか。
前半の面白さががラストまでもてば、この作品は必ずなんらかの賞を受賞していたでしょうに、ホントもったいないです。
船戸ハードボイルドの最高傑作は、やはり「山猫の夏」。
これを越える作品を作るのはやはり難しい、ということでしょうか。


おもろい       おすすめ度
おもろい! の一言につきます。
船戸与一は「猛き箱舟」が最高だと思っていたが、それ以上におもしろい。
(上)のプロローグ、そして本文を読んだ後、 エピローグ(下巻に掲載)、イイ。
物語の最後は作者のいつもどおりの終わり方で、それはいまひとつだが、
でもおもしろい。


船戸、恐るべし。       おすすめ度
実はまだ下巻を読んでいる最中ですが、この本はもう圧巻です。今年は、船戸氏の本を一気に15冊ぐらい読んでますが、「猛き箱船」を頂点にやや食傷気味になっていました。ところが、この本は当たりでしたね。たまたま私は、10歳まで北海道を転々とし、最後にいたのが釧路。遠足で厚岸へ行き、厚岸湾を高台から見下ろしたこともあるので、200年以上前にあの場所で、こんなすごいことが起きていたのか、と思うと感慨もひとしおです。
船戸さんの文章もドライブ感があり、あっという間に読めます。北方謙三さんといい、ハードボイルド系の人は、時代物も上手いですね。下巻の残りを読むのが楽しみです。


なし崩し的な侵略あるいはアイヌの英雄譚       おすすめ度
昔倭人と呼ばれた人々は、約五百年かけて西日本を統一し、その後約六〜七百年かけて北海道と沖縄をのぞく「日本」という国を造った、という言い方も出きるかもしれない。それを「侵略」といっていいものかどうか。島国という事が幸いしたのかもしれないが、西洋と比べて大きな軍事力と軍事力の衝突は起こらず、大きな軍事力に少数民族(この言い方が正しいかどうかも自信がないが)が侵食されるという形で起こった。不公平貿易と差別政策、そして少数民族の日本民族への同化現象(その反対はほとんど起こらない)、これらは現代まで引き継がれた中央の「やり方」である。「なし崩し的な侵略」といってもいいのかもしれない。

18C末、蝦夷地は「日本」に飲み込まれる最終段階に達していた。炎が消えるときの最後の煌(きらめ)き。私は今からその最後の物語を読もうとしている。一人の偏骨日本人が語ったアイヌの英雄譚として。