|
|
|||||||||||
|
||||||||||||
|
|
||||||||||||
■読者の評価
おすすめ度平均
構想の綻び おすすめ度
上巻の質感溢れる濃密な物語から、下巻に期待したが、期待外れだった。全体構想に問題があるのではないか。
下巻の前半は主人公の感傷が延々と語られる。"良"との偽装交換劇の後の展開は、更にセンチメンタリズムの嵐である。本作の結末が原子力発電所襲撃に収斂する事は誰の目にも最初から明らかだが、それを決行する主人公と友人の心理が不透明で感情移入できない。"良"の死から、いきなりの原子力発電所襲撃は展開の飛躍が過ぎよう。襲撃シーンを慌てて最後に詰め込んだかのようである。発電所の設備や襲撃計画の描写は相変わらず精緻で、「黄金を抱いて翔べ」を思わせるが、それが却って読む者に空疎感を与える。コンクリートで囲まれた原子炉の蓋の解放が物質社会への風刺に繋がり、それが主人公の心の解放の象徴となる意図は理解できるが、如何せん、襲撃計画が唐突過ぎて違和感が拭い切れない。
上巻の曖昧模糊としながらも濃密なサスペンス劇と下巻の性急過ぎる襲撃計画がアンマッチで、構想の混乱を感じさせる作品。
下巻の前半は主人公の感傷が延々と語られる。"良"との偽装交換劇の後の展開は、更にセンチメンタリズムの嵐である。本作の結末が原子力発電所襲撃に収斂する事は誰の目にも最初から明らかだが、それを決行する主人公と友人の心理が不透明で感情移入できない。"良"の死から、いきなりの原子力発電所襲撃は展開の飛躍が過ぎよう。襲撃シーンを慌てて最後に詰め込んだかのようである。発電所の設備や襲撃計画の描写は相変わらず精緻で、「黄金を抱いて翔べ」を思わせるが、それが却って読む者に空疎感を与える。コンクリートで囲まれた原子炉の蓋の解放が物質社会への風刺に繋がり、それが主人公の心の解放の象徴となる意図は理解できるが、如何せん、襲撃計画が唐突過ぎて違和感が拭い切れない。
上巻の曖昧模糊としながらも濃密なサスペンス劇と下巻の性急過ぎる襲撃計画がアンマッチで、構想の混乱を感じさせる作品。
心の解放 おすすめ度
北朝鮮、CIA、KGB。
主人公島田を取り巻く人々は、国を背負って生きている。
犬一匹可愛いと思わなかった島田が心の空洞を埋め、自由へと旅立つ。
主人公島田を取り巻く人々は、国を背負って生きている。
犬一匹可愛いと思わなかった島田が心の空洞を埋め、自由へと旅立つ。
緊迫した秘密機関とのやりとりと絶望の中から見出した光とは…
一つが終焉を迎えた時、島田の心に新たな目的が確固としたものとなる。
刻一刻と迫ってくる時間との戦い。
誰を信用し、どの言葉が真実なのか。
果たして、安らぎを見出せることが出来るのだろうか。
人の悲哀と解放を描いた高村氏の傑作である。
内面の描写をもっと丁寧にすべき おすすめ度
(上巻のレビューの続き)
下巻を半分くらい過ぎたところで、ようやく本質的な部分に入ってくる。ここからの展開はスリリングで、手に汗握って読み続けたが…。
ここまでのことをする必然的な動機が、感じられたかと言われれば否である。また、ことの起こりは男同士の間に生じたシンパシーのようなものであるが、これがうまく描かれているかというと、やはり否である。そして、ストーリーからはずれた部分が、伏線としてうまく絡み合っているかと言えば、これも否である。
この作品を科学技術や国際政治の面から見れば、よく練られていると言えるだろう。しかし、人間の内面の描写から見ると、あまり優れた作品とは言い難い。よって☆は3つである。
下巻を半分くらい過ぎたところで、ようやく本質的な部分に入ってくる。ここからの展開はスリリングで、手に汗握って読み続けたが…。
ここまでのことをする必然的な動機が、感じられたかと言われれば否である。また、ことの起こりは男同士の間に生じたシンパシーのようなものであるが、これがうまく描かれているかというと、やはり否である。そして、ストーリーからはずれた部分が、伏線としてうまく絡み合っているかと言えば、これも否である。
この作品を科学技術や国際政治の面から見れば、よく練られていると言えるだろう。しかし、人間の内面の描写から見ると、あまり優れた作品とは言い難い。よって☆は3つである。
個性のある登場人物達 おすすめ度
主な登場人物島田浩二、江口彰彦、日野草介、高塚良の4人にはいずれも独特とした感じが発せられている。主人公は島田だが、良がいないとこの話は完結しない。4人のの人間模様が個々に描かれている。それが高村薫の見せ所である。
話の内容は江口にスパイにしたてられてしまった島田が「トロイ計画」に巻き込まれてしまう。あくまでも最終的には島田と日野の冒険物であり、そこが最大の魅力であるが、経過には不要な箇所もある。文庫化で加筆したから尚更なのだが、ストーリーには不要でも読者としてはおいしく受け取ったつもり。あくまでも日野と江口は対立しないといけないし、島田と日野は仲が良くないといけない。そして良はひたすら自分の目標を達成しなければならない。皆が入り組んだ関係にあって皆がただすることをするだけ。小説だから作れる人間ドラマはストーリーには不要だが、面白い物だと思う。
個人的には冒険小説は好きだし高村小説はこれを読んで更に好きになった。しかし一般受けするかどうかは分からない。不要な部分は不要だと切り捨てる人もいるだろうし、内容が固く下巻は重い部分もある。高村小説好きならば読めても最初から読めるものではない気もしないわけではない。そう言うわけで星5つにしたが、個人的評価と受け取って欲しい。
寂しい結末 おすすめ度
「後ろで「こんなスパイがどこにおるんや。こんなアホなスパイが…」とべティさんが呻いた。島田はもう聞いていなかった。」確かにもうスパイ小説ではなくなっている。ひとつの夢がつぶれた後に驚天動地の孤独なテロリズムが発動する。なかなかこれに共感を抱くことは難しい。それを充分分かった上で高村薫はこれを書いたみたいだ。彼らの「穴」は本当に埋まったのだろうか。彼らは本当に自由になったのだろうか。そう尋ねること自体、べティさんの常識の枠から外れていないということなのかもしれない。

