塩壷の匙 (新潮文庫)
作者 車谷 長吉
価格 500 円
出版社名 新潮社
出版年月 1995/10
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    第6回 三島由紀夫賞   受賞
吉祥天のような貌と、獰猛酷薄を併せ持つ祖母は、闇の高利貸しだった。陰気な癇癪持ちで、没落した家を背負わされた父は、発狂した。銀の匙を堅く銜えた塩壷を、執拗に打砕いていた叔父は、首を縊った。そして私は、所詮叛逆でしかないと知りつつ、私小説という名の悪事を生きようと思った。―反時代的毒虫が二十余年にわたり書き継いだ、生前の遺稿6篇。

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■読者の評価     おすすめ度平均

買いですが。       おすすめ度
車谷長吉の最初に読んだ作品ですが、これ以降正直そんなに読んでいません。なぜだかわかりませんが、氏の作品は自分の生きている日常とあまりにかけ離れているにもかかわらず、なにかのはずみにふと、もしかしたら自分自身でさえ気づいていない、過去に犯したとんでもない罪に問われて、その報いとしてこんな生活を明日から強いられるかもしれないという強迫観念に囚われてしまうのです。


地虫の湧く世界       おすすめ度
 直木賞受賞作品が「赤目四十八瀧心中未遂」であることはAmazonで知ったが、本作品集で十分に車谷ワールドを堪能できるのでは、と想像する。
「この作品で必ず芥川賞が受賞できる」
 このように確信して書き上げた作品がすべて収納されているからだ。
「塩壷の匙」を渾身の力で成し遂げたというのに、結果は落選。作者は精神状態まで狂ってしまったくらいだという。
 ビジネス系の人生指南書のノウ天気さに比べ、どうして小説ってどれも重く暗く悪徳なんだ? 親鸞の悪人正機説「善人なおもて往生をとぐ、いわんや悪人をや」をつぶやかざるを得ない。その真骨頂が本書といえよう。
 車谷のこだわった私小説だが、太宰治を読んだときのような脳髄の痺れる錯角は生じなかった。それは車谷の「私小説」には甘味がなかったからだろう。ひたすら自分の地盤を掘り続け、出てくるのは胞子臭い土だけで、たまに奇態な地虫が姿を現すだけ。
 しかし、それがむしょうに読みたくなる年齢というものがある、ひたひたと背後に迫ってくる破局の日に備えて。
「このごろハムだらソーセージたら言うもんが出来とうやろ、人間ほどむごいもんはあらへん、牛でも鶏でもあないなもんにしてしもて、平気で喰うて行くんやが。(「塩壷の匙」)」
 私も全くそう感じているのだが、やっぱりおいしくいただいてしまうのである。本書も、まだ残されている平和な日常で堪能させてもらった。


私小説       おすすめ度
車谷長吉の作品は我々読者の心を揺さぶる。それも感動ではなく、見なくてもよいものを、無理矢理みせられるような心持である。「詩や小説を書くことは救済の装置であると同時に、一つの悪である。」とあとがきに車谷自身が書いている。彼は救済されるかも知れないが、その副作用で読者である我々は谷底に突き落とされる。なにもここまで書かなくとも。。。その毒にあたるともう読み進めるしか解決方法がないように感じてくる。そこがこの作者の力量である。



うそ臭さゼロの人間の業。       おすすめ度
著者の実質デビュー作品集。
地に足が着き、観念からの構築ではなく、
実感値からの信念が力強く伝わる短編集。

書くべきテーマを見失い、二番煎じの多くあった日本文学
の現状で、自分を見失わず作品化する著者は
非常に稀有。