作者 綾辻 行人
価格 900 円
出版社名 新潮社
出版年月 1995/01
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■読者の評価     おすすめ度平均

カバー装画は奥さん。       おすすめ度
もうひとつの「館」シリーズ(続編出てないけど)ともいうべき、綾辻さんの代表的長編作品。
時期を近くして(翌年だったかな…)刊行された『時計館の殺人』と並ぶ他の追随を許さぬ完成度と、白眉ともいえるその妖しく美しい仕上がりは、全綾辻作品の中でも一際異彩を放っております。
で。
この作品が上梓された時、ファンが戸惑ったのがラストのオチのつけ方。
当時綾辻さんはファンにとって、所謂「新本格」の代表選手《フラッシュポイント》にして、「本格・正統派」の系譜を真っ当に継いで行くであろう、というか継いでくれている希望の星だった訳で、
まあこれは現在でも基本的には変わらない世評ではあるのでしょうが、
つまり、揺るがぬ鉄の掟であった筈の「破綻のない論理的帰結」を、最後に少しずらしてみせた本作の結末は、一体どう落とし所を見付けたものか、判断を保留したファンの人も多かったというか。
ですが。
今思えば、実は非常に綾辻さんらしかった訳で。
『殺人鬼』なんかもそういう事だと思いますが。
念の為申し添えておくと、本格ミステリとしての構成力、リーダビリティでは、綾辻作品中最高峰に位置する逸品ですので、「変格」はあんまり…という方にも無問題。
欲求はこれでもかと満たされます(筈)。
「ミステリ」作家・綾辻行人、渾身の傑作。是非どうぞ。


てんこ盛り       おすすめ度
文庫本で700ページ近くある長編ミステリ。

本格ミステリーの部類に入るのかな?
吹雪の中の山荘、謎の住人、連続殺人、見立て殺人。
これでもかってほど、ミステリ定番の要素がてんこ盛り(笑)

読み応えは確かにあったし、面白かったんだけど
だからと言って印象に残るほどではなかったり。
どんでん返しがあるわけでもなく
じっくりと注意しながら読めば、犯人はなんとなくわかる感じかな。

情景としてすごく綺麗なものが浮かんでくるけれど
どこか物足りなさを感じたかも。
霧越邸の不思議さが中途半端って思えたからかなぁ。
どうしてそんな現象が起きるのか、
そのへんが描かれていればもっと面白かったんじゃないかな?

ラストはちょっと無理があったような…?
謎の住人をどうして謎のままにしていたのか、理由がわからない。

作品としては楽しめたけれど
何度も読み返すほどではないかな?
でも、読む価値は充分あります。


幻想推理の骨頂!       おすすめ度
綾辻行人の作品は本当に描写が巧い。
『十角館』に始まった本格推理群には「人間が書けていない」との声も多く上がるが、それも一種の持ち味ではないかとうちはこの小説を見て思った。それに、この『霧越邸』には殆ど必要ないように思う。美しい『霧越湖』や『霧越邸』の描写。お得意のどんでん返し。深い謎掛け……。それらを総じてこの作品が出来上がっている訳で、幻想小説としても推理小説としてもそこそこの線をいっていた。
ただ、余韻をオブラートに包みすぎて「結局何がしたかったんだ?」と疑問に思う人も多かれ少なかれいると思う。なので、そういった面からもこれは推理小説としての身構えで読むべきではないだろう。
物語が終えても尚不可解な暗示やあやふやな動機……それらが通るのも、一概に『霧越邸』だからだと思う。
純然たる『本格』を読みたい人にはあまりお勧めはしない。漠然とした美しい韻に浸りたい人にお勧めする。


文学と美術の薀蓄と、言葉遊びが満載のミステリ       おすすめ度
この作品の雰囲気や最終的には論理的にまとまる展開が好みです。
 吹雪で滞在することになった霧越邸で、北原白秋の同様に見立てた連続殺人事件が起こります。登場人物は東京の弱小劇団員。
 童謡の見立て、姓名判断、邸内で起こる怪奇現象、謎の人物、そして連続殺人。文学や美術に関する適度な薀蓄も絡めながら次々と提示される謎には、飽きることがありません。そして物語の最後では探偵役の謎解き。すでに提示されていた事実がここで理由を与えられ、なるほど!と膝を叩くことになります。さらに、それだけでは終わらない二重の謎解き。
 言葉遊びに現実離れしたこじつけ感はありますが、だからこそ読み物として面白いとも言えると思います。小説だから文字を使ったトリックを活用できるわけで。現実に近い話は、テレビドラマや映画で実現すればいいですものね。
 ひとつだけ、霧越邸の大仰な見取図の必要性には疑問を感じます(笑)。


うれしい作品       おすすめ度
 「本格物」として楽しく読めた。こういう作品があることは本当にうれしい。「霧越邸の不可思議現象」「霧越邸の雰囲気の未完成さ」「エピローグの甘さ」など細かいいちゃもんは付けられるが、よく仕組まれた作品だと思う。