石の肺 アスベスト禍を追う
作者 佐伯 一麦
価格 1,470 円
出版社名 新潮社
出版年月 2007/02/22
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■読者の評価     おすすめ度平均

肺癌は実はアスベスト過かも、危険はどこにでも       おすすめ度
アスベストに関しては、対策が取られていると思っていた。仕事でアスベストに関係のある私でさえ。近所に工場もないし、学校のアスベスト除去も行われているし。ところが。消防の指導で(どういう法律に基づく勧告だったのか、知りたいが)アスベストを吹き付けることが義務とされ、今も多くの(殆どに近い)ビルの天井裏にはアスベストがあり、鉄骨にも吹き付けられた。それを修理する、立て替える、となると飛散の可能性は高い。また、アスベストは剥落するため、天井の換気から微量ながらも常に吹き出ている可能性も高い。これと喫煙が重なると肺癌のリスクが高まる。医師の経験不足から、多くの症例でアスベストが原因と診断されにくい。新事実として、大量に吸い込むと、比較的短期間でもいろいろな症状が発症する可能性がある。本書によれば、リスクは全国民的であり、クボタの工場の近くの住民だけではない。恐ろしい。行政の不作為(どころか指導もあった)による国民的健康被害の可能性という意味で、アスベスト禍は将来相当な規模で発生すると予想され、今からでもこれ以上の被害の拡散を防ぐ対策を取る必要がある、と読後思った。


私小説家が描く石綿のルポタージュ       おすすめ度
私小説家である佐伯氏が、実体験から描く石綿の現場は分かり易い。
ルポライターやジャーナリストが書くそれらのように肩で風を切ることなく
「咳が近づいてくる。」と現在の奥様に語らせるなど、
ジャーナリストには少ない、きめ細かな描写で読者に分からせてくれる。
また阪神での取材では氏の思慮の深さや、物事の関連づけに底力を見た思いがしました。
間違いなく佐伯氏だからこそ書けた本であり、当事者の声でしょう。
エポックメイキング的本作が、重版を重ねないのが不思議です。


アスベストを直接扱わなくても・・・       おすすめ度
小説家志望の青年が電気工として働きながらアスベストに冒されていく物語
アスベスト建材を専門に扱う仕事でなくても電気配線や配管を弄る仕事だと
アスベスト入りボードに穴を開けたり、アスベストの粉塵の溜まった天井裏に入り込んだりして
結果的にはアスベストを大量に吸い込んで命を縮めていく
また危険な現場で作業をしているときにぜんそくの発作が出て事故死という場合もあるという
こういう間接的なアスベスト吸引に関してはほとんど対策は取られていなかった
ほんで最近ではアスベストが見つかると基地害のごとく除去を行うが
除去作業の入札がたたき合いになっている現実も
防護服の使い回しなど作業者の安全が確保されていないことを考えると
アスベスト自動除去ロボットが実用化されるまでは無理な除去は行わないほうが・・・


重たい問い       おすすめ度
当事者としての自身の体験と現状についての眼差しが交錯した重い本。
ニュースでしかアスベスト被害を知らない人(自分を含む)で、その実態と問題についてきちんと理解しようとするためには必読。


あえてドキュメンタリーとはいいたくない。       おすすめ度
小説家が書いた初めてのノンフィクションが自らのアスベスト被害体験。アスベスト被害者を救済する病院の医師、そしてそれに従事する労働者への取材。あえてドキュメンタリーとは言いたくない。事実を事実として捉え、脚色を完全排除した展開がより被害の怖さを物語っている。
ハリウッド映画俳優のスティーブ・マックイーンはアスベスト被害で死亡したということだ。
知らされていない真実が多いことは被害も多いという事か・・・