ほたる 慶次郎縁側日記 (慶次郎縁側日記)
作者 北原 亞以子
価格 1,470 円
出版社名 新潮社
出版年月 2006/10/19
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シリーズ10作目、現役のころ仏の慶次郎といわれた元定町廻り同心、今は山口屋の寮番として穏やかな隠居生活を過ごしている森口慶次郎を主人公とした北原亜以子さん練達の江戸世話物の連作短編集。
慶次郎は隠居の身ですし、すぐれた剣術の腕の冴えをみせるわけでもありません。それでも自害した娘の許婚で養子となった晃之助や辰吉親分、あるいは嫌われ者の蝮の吉次でさえ慶次郎をたよってくるのは、「俺のでる幕じゃねぇだろう」といいながら慶次郎であれば杓子定規の裁きではなく人間味にあふれた解決をはかってくれることを彼らが知っているからなのです。
「みんな偽物」――貸し本業の広助は、女房おむらの突然の首吊り騒ぎで動転する。十両の借金があるという。父親の連れ子で嫁にいかぬまま一緒にくらしている妹から懸命に止められた怪しい話にのってしまった広助は、まんまと瓦の贋金をつかまされてしまう。慶次郎と辰吉親分の活躍で事件は解決するのだが、おむらには男がいて貢いでいたのだ。慶次郎は広助に言う「女房が逃げたとさ」,妹が嫁に行かない理由を「血を分けた兄弟じゃねぇのだろうが。察してやりなよ」
「付け火」――親孝行で親切でまじめな働き者、嘉助が円光寺に付け火をするところを辰吉に見つけられ捕らわれる。寮番の爺佐七も辰吉の見間違えだというし、寺の僧侶まで嘉助が犯人であるはずがないと言い張る始末だが、本人は自分がやったと言い続ける。慶次郎が仕方なく番所へ出張ると養子の晃之助にまで「後は養父上にまかせます。」と押し付けられる。これも慶次郎と晃之助の粋な計らいで一件落着となるハッピーエンドです。嫌われ者の吉次がそんなつもりはなかったのに女に頼られ、ふと優しい気になる「ほたる」など、どの篇もしみじみとした情感にあふれた短編ばかりです。