海に落とした名前
作者 多和田 葉子
価格 1,575 円
出版社名 新潮社
出版年月 2006/11/29
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■読者の評価     おすすめ度平均

孤独ちょっと濃い目に。       おすすめ度
ホリエ調のぬるくてぼーんやりした空気から、
インテリ度さげて、
ミステリー度あげて、
孤独度を少し濃い目にしたmode…だな。 かな?

さいごのどんでん返し、、静かに狂いゆく感じがスキやた。

むずかしいことばはいらぬ。
小川洋子の海が読みたい。


堆積した脳の垢を洗い落としたい方はどうぞ!       おすすめ度
NHKの週刊ブックレヴューで紹介されたとき、面白そうだったのですぐアマゾンで購入した。4つの短編よりなり、表題の「海に落とした名前」は最後だった。始めの3編は僕には難解な部分もあったが、購入した手前、忍耐で読み進んだ。しかし、表題の短編「海に〜」は違った。この作品だけで僕は5つ星をつけてしまった。読んでいる間、僕は自分の「存在」を嫌でも考えざるを得なかった。名前に隷属した存在、無限に解き放たれた存在(作中の、飛行機事故で記憶を失った“わたし”)、いやそもそも僕らは「存在」しているのか?、いやいや「存在」することはすでに制限を受けることで、無限に解き放たれるためには「存在」しないこと、ではないのか?------久しぶりに、この本で僕は素直に哲学させられてしまった。


小説の世界       おすすめ度
ひとつひとつの物語がどれも素晴らしかった。
中には難解に思えるものもあったのですが、じっくり読み解いていくうちに
いろんな感情が湧いてきました。時間の流れ、そこにいる人間、同時性。
時間はときに人を縛っていきます。ここにいる人物達も日常の中で時間に追われている。
けれど読んでいて、その時間から解き放たれるような感覚を得ました。
時間というのは必ずしもひとつではないという希望のようなものさえ感じました。
また表題作のどんどん不思議な渦に巻き込まれていく過程にも惹かれました。
本を読んでいて、いつしか無条件に違う世界に入り込んでしまったような感覚になりました。
これこそが、小説の持つ力なのでしょう。


様々なものを飛び越えていくことで、なんとも不思議な物語世界を見せてくれる短編集       おすすめ度

 2004年から2006年にかけて月刊文芸誌「新潮」に発表された多和田葉子の4つの中短編小説を収録しています。ドイツで暮らし、日本語で綴る作家である著者らしく、言葉の魔術で遥かな境界線もひらりと飛び越える、不思議な物語が集められています。

 「時差」と題された短編を特に楽しみました。
 ベルリンの日本人マモル、ニューヨークのドイツ人マンフレッド、そして東京のアメリカ人マイケル。彼らはかつて互いに肉体関係にあった同性愛者です。物語の中では、今は3つの街で別々に暮らしている彼らの同じ日の行動が綴られますが、著者は空間を越えている3人の行動を時系列に沿って次々と引き継いで描いていきます。数万キロを隔てたはずの彼らが、まるですぐ隣町で生活していると取り違えてしまいそうな物語世界が広がっています。確かに世界は携帯電話や電子メールで瞬時につながる時代になりました。私もヨーロッパやアメリカ大陸に暮らす友人と、ネットで顔を見ながらライブチャットを楽しむことも珍しくありません。ですが、それでもこの「時差」が見せてくれる空間的な跳躍は私の目には大変新鮮なものに映り、思わず引き込まれてしまいました。

 表題作でもある「海に落とした名前」が大きく跳躍してみせるのは、自分自身という存在の事前と事後に生まれた巨大な隔たりです。主人公はNY発成田行きの飛行機墜落事故に巻き込まれ、記憶を失ってしまいます。救出された時にわずかに手元に残っていたのは買い物レシートだけ。そのレシートを眺めながら、主人公や周囲の人々は、事故以前には確かにあったはずの彼女の素性を----時に興味本位に、そして時に恣意的に----再構築していこうとします。しかし、その作業の過程で、ますます主人公の正体は遠のき、つかみどころがなくなっていくのです。

 いいがたい手ごたえのなさを、著者の紡ぐ日本語が見事に見せてくれる一冊です。